不穏なエピソードが続いた後の日常回。
強く結びついたチセとルツの関係が心地よく描写されていて自然と腑に落ちます。こういう描き方がこの作品の好きなところ。
一方で縄張りをパトロールしてしまうなど犬としての習性がしっかりと印象付けられているところが良かったです。エリアス捜索の時にとても入れそうにない壺の中を覗いているところとかポイント高くて気に入りました。
今話は家、街、村、農業地、森など多彩な舞台がいつも以上に美しい背景に彩られていて視覚的にとても気持ちよかったです。
主人公2人の不安定さや周囲の不穏さが暖かい風景に包まれているというのが作品の安定感に繋がっているのだと思いますしやはり重要なテーマなのですね。
今回はチセの少女としての側面 ー(辛い境遇があるとはいえ)思春期にありがちな思い込みや揺らめきー が吐露される一方で、エリアスの前では女性としての側面が強く出ておりその転換が彼女の「普通さ」を際立たせていました。
またエリアスもつらい時にそばにいてほしい心境や見たことのないチセの表情に興味を持つところなど異形である姿とは対照的にやはり「普通」の男性として描かれていたと思います。
その点でリャナン・シーの登場が意味深かったと感じました。明らかに「愛」と思われる感情を抱いているのにも関わらずそれが認められない、種族としての愛し方ではないことがそれを妨げている様子は其々に歪さを抱える2人の様子とそのまま重なります。
嘆息するルツの感じている通り、あからさまに愛し合い求め合う2人は愛し方が、愛され方がわからないだけなんですね。もどかしいながらも可愛らしいなと思います。
さて、今話はシルキー回でもありました!
チセに対する深い愛情、声は勿論表情にすら出さないのに感じる思い遣り。優しさや情の深さが溢れ出るようで誰もが好きになってしまいますよね。あのハンマーはどこにしまっていたのでしょう。
陽の光を浴びた銀の君は本当に美しいです。
いろんな意味で幼い夫婦をそっと支えるシルキーとルツ。2人の有能さと思い遣りが心に沁みる良回でした。