第1クールの締めくくり。
前回杖をコツコツと仕上げながら自らと語り合った末に仕上がったそれの力を借り遂にチセは真正面から自分と向き合います。
心のうちにこもり自分だけを責めるのは、言いかえれば自分の世界に他者の存在を承認しない冷たい態度でもあります。ネヴィンの言う彼女に救われたあの人この人にしてきた事は全て「施し」になってしまい、チセに気持ちを寄せることを拒絶してしまうことと同じです。
彼女のいう「欲張り」は人の温もりを求める自然な欲求であって、それを引き出したのは多くの優しい「大人」達と何よりエリアスの愛情に他ならず、これまでの長い道のりを思うと感動が胸に押し寄せてきてつい涙がこぼれてしまいました。
チセはこれから自分を認め、赦し、愛するという永遠のテーマとも言える道を歩き出すのですね。その道を導くのではなく、共に歩いてくれるエリアスがいてくれることは大きな幸いだと思います。
火の鳥に姿を変え懸命にエリアスの元に帰るチセ、愛情たっぷりに受け止めるエリアス、駆けつける救護班の2人()のくだりで、こんなにも温かく優しい世界に生きていることに我が事のように喜びを感じてしまいました。
杖の美しい夕陽の色はチセの色であると同時に母親の色でもあります。母親に拒絶されたと傷ついていた彼女に、両親から無条件に愛された記憶が残っていたことは大切な福音でした。
壮麗な画面に彩られながらも終始誰にでもあるような身近なテーマを追い続けてきた本作、これからも丁寧に語られていくことを楽しみにしたいと思います。
冒頭でエリアスの言った「2つの感覚」のひとつはチセを求める気持ちなのでしょうが、もうひとつがおそらくエリアスが向き合わなくてはならないものなのだと思います。
この辺を軸にこれから進められていくのかもしれませんね。後半がとても楽しみな締めくくりでした。