弟かわいさ故の意地悪さの裏に、本当は弟を想う思いを抱える姉・楓。そして、そんな姉からの肯定の言葉を真に受けられない佐城くん。それに、そんな自分を否定し続ける佐城のことが許せないもどかしさに思わず熱くなってしまう愛華さん。なんだかみんな青春が下手くそで、いじらしさと愛おしさに包まれてしまう。
中でも、愛華の上手く察してくれない佐城に向けた苛立ちもそうだし、そんな風に嫉妬して怒っちゃって素直になれない自分自身にも嫌気が刺している姿は、あまりにも不器用で愛おしすぎる…………。
でも一方で、人の心情はやたら推し量れるくせに、自分のことは何も正しく掴めてるつもりで掴めてない佐城くんの不器用さと鈍感さ、憎らしいほどにもどかしい。そして、そんなこびりついたような自己肯定感の欠如といった空虚さの中にこそ、不思議とどこか満たされるものがあることも事実なように感じる。