元通りだけど、今までとは違う新しい世界が戻ってきた。壁がなくなって、神様がいなくなった世界が全てをやり遂げた勇者たちの前に広がっていた。
今まで巫女として神樹様に奉仕してきた国土亜耶は、特に神樹様がいなくなったことがまるで自分が生きるための指針を失ってしまったかのように受け止めていた。だけど、その隣から楠芽吹は「私がいつだって傍にいる」と声をかける。不安な時は友だちことを信じてみてというその言葉には、どこまでも人間らしい温かさを感じるようだった。
そして、新たな時代を前に、これからの勇者部の在り方を考える勇者たち。そこで、園子は乃木若葉が未来に託した初代勇者の一人・白鳥歌野のクワを持ち出して、「戦うことが勇者の本懐なんかじゃなくて、戦いが終わった後に元の暮らしに戻れるよう頑張ることが勇者の本懐だったんだ」と教えてくれた。
だから、「これからの勇者部は人のためになること、困ってる人のために勇者部をもっと続けよう!」という樹の言葉があった。讃州中学勇者部らしいミニマムな勇者、身近な世界に寄り添いながら地道にコツコツ頑張ることが、みんなの生きる世界を救うことにもなるのだと思う。
さらに、それはこの物語の終着点を象徴してるようにも見えていた。人の生きる世界、もっといえば自分の見ている世界を形作っている周りの友だちの存在こそがこの世界の本質である。
だから、世界を守るならば、まずはいつも隣にいてくれる友だちから。そしてまた、そんな友だちがいてくれるという小さな友情を育むことで、大きな意味での世界を守ることだってできる。そうやって人の繋がりを伝って、幸せが広がることで、世界もきっと救われるのだと思う。
そんな小さな幸せの日々を300年前も、今も、4年後もひたむきに守り、未来へ繋げようとする勇者の姿に、とめどなく涙が溢れてきてしまっていた。そして、そんな感動は間違いなく、勇者たちがその勇気を繋げようとする先に、この物語を見守ってきた自分もいる証拠のように思えた。