ブレイズの「私たちはどれだけ信頼し合えるんだろうね」という言葉に込められた、ロドスと近衛局の協定への半ば疑問符のような言葉には、単純にはいかない世界を憂いているように聞こえるものだった。そして、さらに現状を作り出している価値観が、この先も続いていくとは限らない不安定さのことも指し示しているように聞こえていたし、まさにそれが表出するエピソードが展開されていった。
なんとかロドスと近衛局を振り切って撤退することができたファウストとメフィストたち。ファウストはなんとか逃げ出すことができたという安堵のような感覚すらあったが、一方でメフィストは悔しさと憎悪を募らせて、アーツでレユニオンの兵士をゾンビ化させていく始末。
メフィストは「それを僕らのためだ!」と言うけれど、ファウストにはそんなこと認められない。ファウストが望むのは結局のところ、ただの善良な平和なのだ。
かといって、メフィストが望むのもまた平和、平穏なことに違いはないことも事実。だがしかし、メフィストにとっての平穏というのは自分やファウストだけのとても狭い領域の話で、そこにレユニオンの兵士たちは含まれない。本当に身近な世界以外は信頼することのできない「か弱さ」が、メフィストをそんな暴虐へと駆り立てていたのだ。まさにここにあるのは、価値観の裏返し。
そして、戦場では新たな刺客も現れる。民間人も構わずに感染者を殺戮して回る黒装束の一味の正体というのは、リンの率いる近衛局の特殊部隊。チェンのような正義の体現者がいれば、そんな冷酷にも悪辣さを極めた正義の執行者もいる近衛局の一面は、正義の価値観を問うているようにも見えていた。
そんな中でメフィストとファウストたちは遂に追い詰められてしまう。ファウストはメフィストと数人のレユニオン兵士を生き残らせるために、自らの命を削ってアーツで転移させ、一人戦場に残る。そんな仲間想いの姿には一点の悪もなく、ただの心優しい人でしかなかった。そして、最後に近衛局の兵士から数多の矢に射られようというファウストの姿は、ただただ弱々しい存在にしか見えなかった。
強者が弱者として映し出され、正義が悪として、悪は正義として描写された顛末には、この荒廃した世界で誰の正義を信じればいいのかと思わせられるものだった。