非常にもったいない作品。これに尽きる。
第一に、癒されている人物が男性である点が問題だと感じた。正直なところ、癒されている男性を見たところで我々が癒されるわけではない。下品な例えだが、成人向け動画で気持ち良くなっている野郎の顔を見たところで、興奮するどころか萎える現象と同一だろう。これが最も強く感じられたのは第7話のマッサージ回である。この回は男性の喘ぎ声やアへ顔が拝める。必要ない。男性であるために余計な感情移入の余地が生まれてしまっている。「俺はいくら頑張っても仙狐さんに癒してもらえないのにこいつは……」となってしまう。感情移入はスーパー〇〇タイムで充分だ。また、男性であるために、「同棲している異性に性的欲求を持たないモフモフ狂」という変態が爆誕してしまっている。シロがマインドコントロールした際に性欲一切なくモフモフを求めた姿には、一種の恐怖すら覚えた。夜空のおっぱいに目が行ったシーンで安心感を覚えたほどだ。中野が女性であればこの違和感も拭うことができ、評価は「良い」まで上げられただろう。
次に、その他細々としたシーンで変に現実に引き戻されるのが問題である。会社で怒鳴られるシーンは、実際に勤めている人にはふとした拍子にフラッシュバックしてしまうのではないか。油揚げばかり食卓に並ぶと胸焼けしないのか、飽きないのか。会社に行くために起こしてほしいのに結局寝かせ続けられると、会社へどれだけの迷惑がかかってしまうか。あまりにも世話を焼かれ続けているが、なぜここまで尽くしてくれるのか、裏があるのではないか。気になるシーンが点々と存在した。何より、妙なシリアスシーンがどうしても気になった。私としては癒しを求めてこの作品を見ているのに、何か深い理由がありそうな背景を見せられてもなあと思った。仙狐さんがやたら尽くしてくれるのはこういう理由がある、という事情を説明するのはよいが、少し暗くしすぎではないだろうか。心を落ち着かせて見ることができない。正直完全に主観的な意見ではあるが、背景説明もほどほどに完全に癒し偏向の作品であれば、今期トップクラスの難民作品になれただろう。
長くなったが、要は「中野を女性にして、完全に癒し一本にすれば私好み」という個人的な意見である。