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全体
とても良い
映像
とても良い
キャラクター
良い
ストーリー
とても良い
音楽
良い

テレビアニメとして『進撃の巨人』を見た時、まず圧倒されたのは物語そのもの以上に、WIT STUDIOによる映像表現だった。特に立体機動装置を用いた空中戦は、従来のアニメアクションとは次元が違う。カメラが縦横無尽に飛び回り、視点そのものが空間へ放り込まれていく感覚がある。高速移動の軌跡と重力感覚を同時に成立させた演出は、板野一郎による高速ミサイル描写、いわゆる「板野サーカス」の影響も強く感じさせ、空間を“線”ではなく“流れ”として描いていたのが印象的だった。

また、巨人の不気味さの演出も秀逸である。完全な怪物ではなく、どこか人間の顔立ちを残しているからこそ気味が悪い。笑っているのに感情が見えず、人体に似ているのに決定的に何かがおかしい。その「人間に近いのに人間ではない」というズレが、不気味の谷に近い異様さを生み出していた。単なる化け物としてではなく、“理解できない存在”として巨人を描けていた点は非常に強い。

そして本作は、当初こそ「謎の敵に脅かされる閉鎖世界」という、いわゆるセカイ系作品のような導入を見せながら、物語が進むにつれて人類そのものの業や歴史、差別、憎悪の連鎖へとテーマを拡張していく。世界の真実が明らかになるにつれ、「巨人と戦う話」だったはずの物語が、「人間とは何か」を問う作品へ変貌していく構成は見事だった。伏線やプロットの整理も非常に丁寧で、後半に向かうほど世界観の奥行きが増していく感覚がある。

ただ、その一方で、序盤から中盤にかけてはテンポの悪さもかなり気になった。特に1期〜2期では、「巨人の恐怖」を強調する演出が長く続くため、似た構図の絶望描写が反復されやすい。もちろん“死が隣り合わせの世界”を体感させる意味は理解できるのだが、3クール近く同種の緊張感が続くと、物語の核心に迫るテンポが停滞しているようにも感じてしまう。「壁の外には何があるのか」という最大の謎で引っ張っている作品だからこそ、視聴者側としては「早く先を知りたい」という感情が強くなり、そこへ足踏み感が生じてしまっていた。

また、世界設定についても気になる部分は残る。立体機動装置という極端に発達した高圧ガス技術を持ちながら、対巨人兵器の発展がやや限定的に見える点である。特に壁外世界の技術水準が明らかになった後は、「なぜ対物ライフルのような発想に至らないのか」「火力によるうなじ破壊をもっと体系化できないのか」といった疑問も浮かんでくる。もちろん、“人間が剣で巨人に挑む”という浪漫的な画作りが本作の魅力を支えているのは理解できるのだが、世界観がリアル寄りに拡張されるほど、逆にその部分の歪さも見えやすくなっていたように思う。

そして終盤については、エレンの行動の描き方に少し複雑な感情も残った。彼が背負った絶望や、自由を求め続けた末路にドラマ性があるのは確かだが、一方で、その破滅的な選択があまりにも叙情的に演出されることで、“凶行そのもの”まで美しく見えてしまう瞬間があったようにも感じる。悲劇として描いているのは理解できるが、演出の熱量が強いぶん、受け取り方によっては美化にも映り得る危うさがあった。

とはいえ、本作が現代アニメ史に残るスケールの作品であることは間違いない。圧巻の映像表現、緻密な伏線構成、そして人間の本質へ踏み込もうとしたテーマ性。それらが高水準で結実していたからこそ、『進撃の巨人』は単なるダークファンタジーを超え、多くの視聴者に強烈な印象を残したのだと思う。



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