ヴァイオレットの率直に思ったことを口に出す性質はいつも人の心を揺さぶります。それは時に本質を穿ち感動へと導くこともあれば、触れてはいけない部分に触れ悲しみや怒りを呼び起こすことも。
例えば目的地へと向かう車内でのアイリスとのやり取りで、カザリの地勢の説明で彼女を納得させた後すぐに苛立ちを掻き立てるところなどこれまでも度々描写されている通りですが、やはりこの点がヴァイオレットのドールとしての持ち味になって行くのでしょうね。
またヴァイオレットが、自身の振る舞いで人を傷つけてしまったことに気づかされた時や他人の気持ちが理解できない時には真剣に悩んでいる様子もよく出てきます。表に感情を出さない分内面は寧ろ人より激しく揺れ動いているのかもしれません。
そして彼女は美しいものを感じとる感性が豊かです。泣かれようが怒鳴られようが動じないヴァイオレットなのに、平坦な口調ながら美に魅了されるシーンは正に心奪われるといった風情でとても印象的。やはりそれは秘めた感情の豊かさを雄弁に物語るものだと思います。
人の感情を訪ね自らも成長してゆくヴァイオレットの歩みは黄前久美子のそれに似ているようにも感じます。
余人ならば避けて通るような道を怯まずに進むヴァイオレットの姿が痛々しくも心地よく感じます。