皐月からの電話は「あの映画の話、怪しいから受けちゃダメ!」というものだった。それを受けた女将は驚くことなく、むしろそんなもんだと分かっていたようだったけれど、喜翆荘を継ぐ若旦那・縁に任せたことだと答えは変わらなかった。
そして、案の定に映画のプロジェクトの破綻が告げられて、喜翆荘からの出資金も持ち逃げされてしまい。しかし、若旦那はそれでも後悔してないと胸を張り、女将もいつもと違って「今日は母さんでいいよ」と若旦那を労るようだった。
きっと、それは若旦那が本気だったから。結果としては勢いよく空回りしてしまったけれど、この経験を踏んだ若旦那は喜翆荘を継ぎゆく者として成長できた。チャレンジの結果は意図したようにはならなかったけれど、意図しない成果も得られた。努力は決して無駄にはならないと、そんなことを物語っているようだった。