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良い

☆☆☆★(3.5)
 この話が今のところ一番おもしろかったな。
 王族二人による公開恋文は、国民の気持ちを高揚させたり、二人の結婚を祝福してもらえるような気分の醸成をしたりすることを目的としつつも、何より高貴な人々のロマンスを傍観するという娯楽を国民に与えているものだと思うので、本人たちの生の声でなくても、ドールによる修辞に富んだ文章で十分その役目を果たすと思う。しかしこの話だと本人同士が直筆で手紙を書くようになり、そのことが本人たちの心の結びつきをより強め、またそのリアリティによって国民の感情までもをこれまで以上に盛り上げていった、というのがおもしろかった。本人たちのためにもなったし、結果的に国民をより喜ばせることができた。
 ただ個人的にはここまでプライベートな手紙なら公開恋文って形にしないで本人たちの間でやりとりをしてもらって、表向きの手紙はドールに書いてもらう、とかでもよかったんじゃないかな、とも思ってしまった。王族は多くのものを有しているけれど、公人であることはある意味では不自由なんだなあと感じた。でも二種類の手紙を使い分けるような時間もないし、そんな関係性でもないか。あとこれは王子のいい声でもって成立していたようにも思う、映像的な話になってしまうかもしれないけれど……。あのくらいぶっちゃけた手紙を書くシャルロッテ姫に好感を抱いたけれどもね。
 ダミアン王子の手紙にあった「私のあなた」という表現を聞いて、取り乱すシャルロッテ姫のシーンが本当によかった。百合じゃんね、もはや百合が安易な言葉になりすぎて使うのに躊躇するレベルなんだけど、姫とアルベルタは百合。この婚姻物語の締めに登場したのも姫とアルベルタだったしね。でもシャルロッテ姫とダミアン王子には未来があるけれど、嫁ぐことによって姫とアルベルタの関係は過去になってしまうわけだから、二人の関係を強調して終わったのはとてもいい終わり方だったと思うな。
 ところでヴァイオレットが14歳くらいというのを聞いてとても驚いた。そうだったっけ……? すでに物語に登場していた情報だったとしても、まったく記憶にない。17歳くらいかと思っていた。そして数ヶ月働いた成果だと思うけれど、ヴァイオレットの手紙を書く力が非常に向上していて驚いた。カトレアさんが書いたものだと文体で判別できるくらい、ヴァイオレットは成長していたんだなあ……。にしてもどちらの手紙もC.H郵便社の自動手記人形が請け負うとか、代筆業は寡占なのか? 癒着? 普通に腕がいいって話なのかな。まあこんな大きな仕事に社の看板ドールであるカトレアさんが指名されないほうが不可解ではある。
 あとシャルロッテ姫が自動手記人形のことを代筆屋って呼ぶのもよかった。ほんと、人形っていうか代筆屋なんだよな。代筆屋。ヴァイオレットとギルベルトも10歳は年が離れているよね?
 この王子、若い津田健次郎みたいな感じでいい声だなと思っていたら、当然のように津田健次郎だった。姫の声もかわいいな~と思っていたらまめぐだった。確かに声優としてのスキルがあがったあとのまめぐはこういう声の調子で芝居をしているような気がする。小山茉美さんといい、いい声の人がたくさん出ている回だった。
 終わり方がヴァイオレットの過去につながるような感じで、不穏だったね。



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