この作品については映画館で予告編だけ見て「あ、絵がいいな」と思って興味持ってました。その時は、ぱっと見では黒髪の子がいいなと思ったんですよね。あと、王道アイドルものなのかなっていう第一印象。トラペジウムかー、オリオン大星雲の生まれたての青く若い四つ星か、なるほど、いいタイトルだな、と。
その後、上映が始まってなんか「主人公がヤバい」みたいな感想をよく見かけるようになって、ふーんアイドルの闇とかを描いた作品なのかな?とも思ったんですが、どうヤバいのかとかの前情報は一切シャットアウトして、たまたま機会があったので観に行きました。
で、第一印象なんですが、いや全然登場人物ヤバくないやん!めちゃくちゃ真っ当でどストレートな王道青春映画やん!という感想を持ちました。
誤解を恐れずに言いますが、自分は主人公にすごく共感したし、自分もある種こうありたいと思わされた部分がありました。自分の感情に照らして既視感を感じるというか、すごく解像度が高い、リアリティのある物語だなという感覚を持ちました(もちろん自分はアイドルはまったく無縁なので、別の何か追い求める物に対してですが)。
(はい、以下延々と自分語りするので適当にスルーしてください)
確かに彼女の言動はすごく独りよがりで自分勝手で、人の心がなくて、周囲の人たちを傷つけまくっている。それが人としてあかんやろ、とはもちろん思います。ただ、彼女の感覚はすごくリアルだった。きれいごとじゃない、等身大の15歳の強烈な自我をすごい解像度で描いてるな、と。決してサイコパスではない。理解できる。というのは、この身勝手さ、人の心のなさ、打算的な思考は確実に自分にあるものだったからです。自分もわりとこういう考え方をしがちな人間だな、と。特に10代のころはそれが先鋭化しがちだな、と。大人になってだいぶ学習はして少しは擬態ができるようにはなりましたが、たぶんまだ心の底にはこういう思考が普通に残っている。
もちろん、アイドルになりたいと思ったことは一度もありませんし、むしろ頼まれてもなりたくないほうです。人前に立つことは絶対に嫌です。かつて一度だけ一瞬TVに出たことがあるのですが、正直トラウマです(なのでTV出演のシーンではPTSD気味になってましたw)。そういう部分はくるみにすごく近くて、彼女にもすごく感情移入しながら観てました。
ただ……アイドルとか目立つこととかではなくても、何か自分のやりたいことに対して、手段を選ばず周囲を利用してまでそこに到達したい、という強烈なエゴはやっぱり自分にあるんだな、と思い知らされた次第。そしてたぶん自分は彼女のように、知らないうちに暴走して周囲の人を悲しませたり怒らせたりしてきたのだろう。彼女は終盤でちゃんと気づいて、関係性を修復することができた。でも自分はきっと気づけずに失ったものがきっとたくさんあるのだろう…うわあ…ってそういう共感性羞恥を持たせる作品ですね。東西南北を集めるとかいう発想は常軌を逸してますが、10代ってだいたいこういう意味不明なこと考えてたりするものです。ヒリつく場面はさすがに「お前…もう少し人として擬態しろよ…心で思っても口に出すなよ…」と思いましたが、それすらも若さゆえの痛い過ちとしての解像度が高い。
そんな風に人でなしな部分が自分と似てる東ゆうなのですが、自分と決定的に違うのが行動力と意志の強さです。自分の場合、ドロドロしたエゴはあってもそれをうじうじと反芻しているだけで具現化していく勇気も甲斐性もない。他人を気にしすぎて勝手にハードルを上げて、動き出す前に勝手に諦めて、自分の境遇を逆恨みする。最悪じゃないですか。それにくらべたら東ゆうは100万倍えらいと思うわけです。やり方はいろいろ問題あったし人を人と思ってないけど、それでもエゴを貫くふてぶてしさがある。それは弱みにも強みにもなりうる。
だから自分にとっては彼女がまぶしかったですね。こんな風に好きを貫いて、周囲を踏み台にして夢を叶える彼女がどこかうらやましかった。その行動力だけは見習いたい。夢なんてものを本気で叶えようと思ったら、多少の強引さは必要なんじゃないか。「自由にやっちゃえよ」ってことで。勝手にくすぶっていないで、周りからどう思われようとも、自分のやりたいことを少なくとも主張はしていったほうがよいんじゃないだろうか。みたいなことを考えました。ただし彼女の過ちは継承しない方向で!
そんなわけで、夢を叶えようと本気でもがく若者のリアルがよく表現された作品だな、と思いました。観てよかったです!
・OP が星街すいせいさん feat. でびっくり!
・作中で何度も映るオリオン座、見間違いだったらすみませんがなんかちょっと歪んでませんか? しかも歪みが大きくなっていく。なんかオリオン座のつづみの形、変だな?って思ってました。最後にはわりとまともな形に戻ってて、何かを表してるのかなとか勝手に深読み。
・C++とJavaなのかー。ロボコンの解像度個人的にもう少しほしかったですが、まあロボコンアニメじゃないのでw くるみ、ただでさえ孤立してるのに独自行動しちゃって部活の人間関係的に大丈夫だったんだろうか?
・東西南北の4人のアイドルにかける温度差が全員バラバラなのがよいですね。そりゃ分裂するだろっていう。そこがまたリアルで、アイドルに限らず温度差の違う複数人でひとつのことをやるのやっぱ互いに大変だよなと。
・予告編では美嘉かわいいなと思ってたんだけど、ちょっと思ってた感じと違った! 彼氏と別れさせられたのは気の毒としかいいようがない。蘭子、意外とアイドル活動にノリノリなのが癒やしでした。
・真司、いいキャラですね。星が好きで写真が好きで、別に東ゆうにぐいぐい来るわけじゃなくて、でも東ゆうの野望をただ一人知っていて、あくまでもフラットに彼女を支える関係として、殺伐としたストーリーを中和してくれてました。ちょっと都合よすぎキャラな気もしますが、でも最後に彼もまた夢を叶えているのはとてもよかった。
・サチも最後に伏線ほしかったかな。
・ボランティアやSNSの利用の仕方、決して先鋭思考とかじゃなくてガクチカみたいなものじゃないですか。アイドルじゃなくてもたぶん就活とかその後のいい人生をつかむためのあれやこれやで、あれくらいのことはやってきてる気がする。ていうかアイドルデビューを目指す活動と就活って似てるな。自分を売り込む。
・「なりたいじぶん」の曲、いいですね!らったった〜のところ好きだ。
・吉祥寺の啓文堂だ!