風流で雅、浪漫あふれる「るろうに剣心」
原作は中学生の頃に読み、テレビアニメはアマゾンプライムで公開されたときに挿話をかいつまんで視聴した程度です。
本作は原作マンガの「追憶編」に準拠しながらも、歴史を別の角度から捉えなおしたような「新約 るろうに剣心」ともいうべき内容です。キャラデザは写実的に変更され、描写は現実感重視となっています。
単体作品として完成されていますので、原作を知らなくても楽しめます。むしろ知らないほうが滑らかに作品世界に没入できるかもしれません(笑)
時は幕末。剣心が時勢の権力に与することを良しとしない飛天御剣流の教えを破ってまで人斬りとして討幕派に参画した経緯、人斬り時代に出会った雪代巴とのうたかたの恋が描かれます。
巴、いいですね。儚い、刹那的、夢幻、薄命美人、そんな言葉がここまで似合うアニメヒロインは他に類を見ないのではないでしょうか。
瀟洒な本筋もさることながら、研き上げた台詞と風流な演出が見事。全4話がそれぞれ四季とリンクしている演出など、情緒深く心憎いです。
たしかに原作やテレビアニメの印象とは乖離が大きいですが、そこを踏まえて見れば、テレビ放送から1年を経て狂い咲いた名作です。
原作では浮きがちだったサブタイトルの「浪漫譚」という言葉が、本作ではぴたとはまっています。胸に響くような重厚な物語を求めている方にお勧めです。
アニメ制作現場、仕事の流儀
花咲くいろはに続く、P.A.WORKS「働く女の子シリーズ」の第二弾。
かなり面白かったです。
開始4分「ドンドンドーナツどんと行こう!」のところで、日常系萌えアニメかと思って折れかけましたが、視聴続けてよかった。
主人公ら新人の成長を軸として、アニメ制作現場の仕事の魅力を濃密に描いた傑作です。
比較で言えば、花咲くいろはが各登場人物の個人的な悩みが中心であったのに対し、本作はあくまで仕事への向き合い方をメインテーマに据えています。いろはよりもターゲット年齢層がやや高めな印象です。
主人公の宮森あおいはアニメ制作会社「武蔵野アニメーション」の”制作進行”という立場。各種スタッフの手配やスケジュール管理、その他雑用なんでもやる仕事です。テレビならAD、CM制作会社ならPMが近い。何となくイメージがつきやすいアニメーターや脚本家ではなく、制作進行を主役に据えたところに真剣に業界を描くぞという気概が垣間見えます。
自分たちの仕事を描いているだけあって、密度が濃い。各スタッフの仕事に対する矜持や葛藤がリアルに感じられました。個人的には特に16話がお気に入り。ラストの演出もニクく、思わずウルッときました。
一方で表現はコメディチックですので、軽い心持ちで視聴できます。極端な鬱展開になることもありません。キャラクターも女の子多めでカワイイです。
※余談ですが、実際のアニメ制作会社でも女性スタッフの割合は今とても高いそうです。実写映像の世界との違いを感じ意外でした。
結論、元気をもらいたいときにオススメの一作です。もっと泥臭くてキツイ部分も如実に描いたドキュメンタリーテイストな作品を求めている方には物足らないかもしれませんが、そういうときはプロジェクトXかプロフェッショナルがオススメです(笑)
抜群の構成力。リメイクを希望してやまない名作
今やパチンコのほうが有名になってしまった感のある本作。2018年には続編として「桜花忍法帖 バジリスク新章」が公開されました。ところがそちらはまったくの別物に。桜花でツマランと思った方も、切り捨てずにこちらに手を伸ばしていただきたい。
シリアスストーリーが大丈夫な方には是非オススメしたい名作です。
原作は山田風太郎作の古い小説。能力バトルものの先駆け。ストーリーはあにこれのあらすじにあるものがわかりやすい。
特筆したいのは脚本の構成力。
総勢20名あまりのキャラクターが登場しますが、皆個性が確立しています。普通2クールにそれだけの人数を登場させては難しいところを、本作は無理なく描き切っています。
また各キャラクターの特殊能力も見ればわかるもので、魔力がどうのチャクラがどうのという設定の煩わしさがありません。設定を簡略にして上手くいった良い例でしょう。その分キャラクターの心情描写に重きをおくことで、世界観もしっかり伝えてくれます。
惜しむらくは、作画がやや物足りないと感じる箇所があるところ。重要な戦闘シーンで、労力を惜しんだような部分が見受けられます。結果、第一話の最初の戦闘シーンが一番よかったということに。
今の技術でリメイクしてくれれば、より揺るぎない名作になると思うんですがどうですかね。桜花忍法帖を観るにつけ、そう思う次第です。
没頭する世界観、骨太ヴァンパイアムービー
友人に勧められたのですが、絵柄がなんとなく受け付けず視聴を先延ばしにしていました。ところが見てみてビックリ。まさにこれぞ隠れた名作!と唸らされました。
まず冒頭2分のオープニングシーンで惹き込まれます。 {netabare} 「人ならざるモノが深窓の令嬢を誘拐する」というシーンですが、演出がオシャレ。十字架がへし曲がり灯りが消え狂犬が子犬のように怯えたかと思えば、一両の馬車が横切り、瞬間噴水の水が凍りつく。 {/netabare} 起こった出来事を明瞭に伝えながらも、化物の存在と恐ろしげな世界観が醸し出されています。
このような、粋な演出を感じるシーンが本作では目白押しです。冷めることなく作品の世界観にのめり込んでしまいます。
そして、主役のヴァンパイアハンターであるDが、ハードボイルドで格好いい。セリフは少ないのに、優れた演出も相まって「孤高なハンター」という印象がハッキリ伝わってきます。仕事はあくまで報酬の対価として行うという、ドライとも見えるプロの矜持を持ちながらも、劇中ほんの少しだけ覗かせる人間味がこのキャラクターに格別の魅力をもたらしています。
声優陣も豪華。大御所・名優・職人と呼ばれる演者さんがそれぞれ声を当てていらっしゃいます。主要キャストに限らず端役に至るまでキャラが立っているのは、声優さんの力も大きいと感じます。(個人的にはバルバロイ長老役の故大塚周夫さん、カーミラ役の前田美波里さんの演技がよかったです。)
BGMも素敵です。格調高いながらもおどろおどろしいメロディーが作品とマッチしています。(スタッフロール時に流れるエンディングソングは明らかに作品と合っておらず視聴後の余韻を阻害しますが、本編に絡んでくることはないので見て見ぬことにしました笑)
ただ、戦闘シーンはやや物足りなかったかなと。映画ですし、もうちょっと迫力のある画が見たかったなぁという残念感はあります。
総括。戦闘シーンは文句めいたこと言いましたが、逆に言えばそれ以外はパーフェクトと呼べるほどに満足な出来でした。シリアスものを求めている方には、自信をもってオススメしたい一品です!
硬派なSF
攻殻機動隊以来の硬派なSFサスペンスといった印象です。随所に哲学的もしくは社会学的な問いを散りばめながらも、攻殻よりはずいぶんと分かりやすい脚本に落とし込まれており、人にも勧めやすい作品です。
常守朱の成長物語と、狡噛慎也と宿敵槙島聖護の因縁対決を2軸としたストーリー。しかし常守朱は視聴者目線の狂言回しとしての役割も強く、先に役割があって、後から肉付けされたキャラクターなのかもと思いました。
声優さんの演技も光ります。純朴な新人を花澤香菜さん、知的で武辺な骨太刑事を関智一さん、ニヒルでキザな悪役を櫻井孝宏さん、などそれぞれ好演されています。特に関さんがシュタインズゲートのダルと同一人物だと思うと、やはりプロはすごいなぁと驚きました。
キャラクターで特筆したいのは、槙島聖護。古い小説と哲学書に造詣が深く、たびたびセリフに引用する様は下手すれば痛くなりがちなものの、脚本と声優さんの演技が相まって決してチープな悪役になっていません。
管理社会の中で管理の範疇に入らなかった槙島がその孤独を動機として社会に反発する。槙島がとる最も非人間的な行動が、その実最も人間臭い理由によるものだと描くところは考えさせられるものがありました。
ラストはしっかり決着はつけつつ考察の余地を残す終わり方で、最後まで楽しめました。