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全体
良い
映像
普通
キャラクター
良い
ストーリー
普通
音楽
良い

『職業系の文脈で描かれる魔法少女』
従来,魔法少女系作品において,一般の魔法少女表象である夢・希望とのギャップ性を描出する手段として,その表象とは対照的な絶望・残虐性・悪徳が用いられてきた.-まどマギ以降の潮流がそれに該当するだろう-本作でも,魔法少女のギャップ性とともに物語世界が構築されるのであるが,今までとは異なる在り方である.それは,魔法少女の職業化である.ファンタジーである魔法少女が,職業という現実的なシンボルに包まれている.そして,自然災害になぞらえた敵,怪異を魔法少女に対する悪として描く.それぞれ,現実的なシステム・現象の中にファンタジーを組み込んでいると言える.この世界では,怪異を捕獲するusbメモリ,雇用される魔法少女,事務的で無機質な魔法詠唱,コンピューティングによる魔法製作,メカ様態の箒など,非現実な事物が現実的な装いを施されて描かれている.また,エキスポ,リクルート,協働業務,出向など,ビジネスシーン上で魔法少女の物語が進行する.このように,本作では物語世界においてファンタジーとリアリティの融和に挑戦しているのだ.これは,鑑賞者である私の没入体験にまで及ぶ.往々にして,魔法少女は世俗から離反した存在である.秘密裡に魔法を使い,世俗で生活する姿とは分離している.だが,本作は異なる.本作の魔法少女は徹底して社会的なのだ.魔法少女を構成する隠匿性,個別性が取り払われている.主人公のカナは,一般社会で魔法少女に変身し,仕事を通じて自己啓発してゆく.そこで,私は反現実的な変身願望を満たすと同時に,現実の自己にかかわる自己発展を体験するのである.この,性質上相反する没入は本作でのみなされるものではないだろうか.



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