マルクスの指摘した物神崇拝の権化、倫理なき合理主義。貝木のこうした存在性を考えると「教訓」の口癖は「意識高い」人間の戯画化だろうか。詐欺師が契約自由の原則を振り翳すなど詭弁もいいところだが、彼の立場は確固として語り口は魅力的ですらある。「どれほどの違いがある?」勢いのまま乗り込んだ火憐はこの問いに答えられず、むしろ再分配としての詐欺(『老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体』によれば特殊詐欺の現場でも吹聴されている論理らしい)が尤もらしく聞こえてしまう。
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