圧巻の90分枠。
Vtuberというラディカルな領域に身を置いているので子供がいてショックな気持ちはあまり分からないが、普通のアイドル業界は今もそんな感じなんだろうか?
パフォーマンスの演出・作画が素晴らしい。こんなにも「最高のアイドル」を説得力持って描き出した作品は記憶にない。
『ガーリッシュナンバー』であったように(これは職業としては声優だが)リアリティショー、ドキュメンタリー的に「裏側」を見せていくアイドル物はつまりライブアイドル(さやわか氏の言葉)の側面の落とし込みであり、実は目新しいものではない。
では何故この回に圧倒的パワーがあるかと言えば、それは「嘘」と言表されるアイの振る舞いがどうしようもなく本物だからではないか。
簡単に言えばアイは子供によって初めて「本物」の愛を知った(オタ芸のところの笑顔に関する流れが象徴している)という話だが、死に際に言う様に彼女には「愛したい」という気持ちが確かにあった。そして驚くべき水準で実戦をもしていた。結局「愛」と言い切れなかったのは境遇から来る実感の無さ、自信の無さだったのだ。
物語上ファンサは嘘、子への愛は本物、という構図を取っているが、アイは死に際にそれを破壊してしまう。本物だからこそ刺殺犯は逃げ出すしかない。
騙されたファンが逆恨み、愛せたのは子供だけ、何故そうはならなかったのか。
それはアイがどうしようもなく本物だったからだ。ステージの上だけではなく、その存在性全てが完璧に。
考えてみれば彼女の姿はプライベートの場面でもキラキラでステージ上と変わる事がない。
「リアリティ」ショーなどとんでもない、この作品もまたアイにアイドルという夢を見ているのである。