今回は田所あずささんの熱演に救われたと思う。田所あずささんが氷雨を演じてくださって本当によかった。
音楽のつけ方のちぐはぐさに首を傾げるのはいつものことだが、今回は特に本来作品を盛り上げるべき音楽が逆に盛り下げていると感じた。夕日がさみだれに会わせるために氷雨を引っ張っていくシーンとか、なんでそのタイミングでその音楽をつけるのか、全く理解不能。せっかくのthe pillowsの曲も、全然シーンと合っているとは思えなくて、もったいないことこの上ない。
ちゃんとした作品にはその回のここぞという見せ場があるもので、今回なら夕日の「ぼくがついてる」がそうだと思う。少なくとも原作では夕日のこの台詞とそれを聞いたさみだれの反応は1ページに2コマの大ゴマで描かれており二人の表情もすごくよくて、読者の印象に強く残るよう演出されている。
一方アニメ版は、原作と違って「帰ろう」のときの夕日の表情を見せてなくて、「怖がらなくていいんですよ」と「ぼくがついてる」を1カットにしてしてしまっているため、「ぼくがついてる」が際立たない。さらに言えば原作のライティングのようなプラスアルファの演出もない。
夕日の表情にも原作のような「ああこれはさみだれも顔を赤らめるわ」と思わせるような力はないし、それを聞いたさみだれの表情もイマイチ。原作はその2コマ後の「うん」のときのさみだれの横顔がまたいいのだが、アニメ版はそこでさみだれの顔を映していない。
本作を見ていると、マンガの面白さを損なわずにをアニメに落とし込むことの難しさがよくわかるなあ。