興道がルルーシュの物語としたら、叛道はスザクの物語といっても良いくらい枢木スザクの内面に深く踏み込む物語に仕上がっていた。TV版1期の後半の山場「血染めのユフィ」からTV版2期の前半ブラックリベリオンまでを描く総集編の第2弾という触れ込みだが編集方法が非常に巧みで新鮮に観ることができた。TV版ではあまり描かれなかった枢木スザクの視点が追加再構築されており、TV版より彼の苦悩や迷いが随所に描写されていてスザクファンの私としては終始画面に釘付けになって観ていられた。
この総集編はルルーシュはナナリーのためでもあるが、スザクにも執着してることがよくわかる構成にもなっている。スザクは己を貫くためゼロと一緒に心中して死ぬことまで覚悟して寸前までいくが「生きろ」というギアスの呪縛をかけられてしまう。その呪縛が今後良くも悪くも物語を盛り上げる最高のスパイスになってるのが面白い。
場面は変わって、式典の日ルルーシュやスザクの感情がむき出しになる一番の山場を迎える。ルルーシュはユフィのことを信じきれないが、ユフィの皇位継承権を放棄したというセリフでついにルルはユフィを信じる気になる。BGMが穏やかになりルルーシュは負けを認めユフィを受け入れる直前まで物語は進む。しかしその後の訪れた悲劇は何度見ても秀逸で罪深い場面だ。ユフィの肝心な場面にスザクはいつも居ない。いやスザクの不在っぷりに関してはコードギアスの世界がそうあるべきというもはや呪いのようなもので徹底的されているような感じがする。
物語はR2の部分に差し掛かり、スザクはそれでも元凶であるルルーシュを憎くみきれず、記憶を消去して徹底的に監視するという手段でルルーシュを守ろうとする。
自身の出世のためにルルーシュを売ったという部分も事実だが、彼なりに憎むべき世界を赦して守ろうとする姿勢が見て取れるのが良い。
後半は再びルル視点となり皇帝シャルルと対峙しギアスという力に新しい事実が次々に明らかになる。その中で段々とルルーシュは追い詰められ、ついにはナナリーを守る手段がこのままではないという事実に辿り着いてしまう。
そしてルルーシュはスザクに直接電話をかけて、自分がゼロであることを認め情に訴えるという手段に出る。
弱弱しい声で、プライドを捨てて、スザクに「ナナリーを護ってください…」
あのルルーシュがスザクに心の底から懇願するシーンには言葉が出ないくらい辛い感情を共有することになる。
その後ルルとスザク、そしてナナリーの幼少の頃のシーンが差し込まれてEDとなる。
コードギアスという作品の持つ複雑な起伏が2時間弱という時間で駆け抜けて総集編と呼ぶにはあまりに勿体ない傑作に仕上がっていた。