ジブリの中では珍しく大人が主人公の作品。
「カッコイイとは、こういうことさ。」というキャッチコピーに恥じない内容である。
大人になってから見ると、めっちゃ良かった。
それにしても、登場人物の会話がウィットに飛んでいて、コミカルな見た目とは裏腹に、実はまったく子供向けじゃないことに気づいてしまった。
意外にコミカルなんだな。コミカルな中に譲れない生きざまが見られてよい感じだった。
冒頭の飛行艇と青い海に、子供心や冒険心をくすぐられてわくわくした。これぞジブリ作品、宮崎駿、という感じ。
単純で馬鹿でかっこいい男と、強く美しくズルい(女を武器にする)女という、宮崎駿の男女観が見えるキャラクター達が愛おしい。特にフィオが痛快な性格でかわいい。
飛行艇の動きが良く、特に水や雲と交わったときのまとわりつく感じが好きだ。アメリカ男との操縦対決は、最後までテクニカルな飛行艇さばきで締めると思いきや、殴り合いで決着。サングラスがハート形に凹んでいるのは遊び心かな。
マルコはキスで(一瞬?)人間に戻ったのか。アメリカ男はハリウッドデビューをしているし、幸せなエンディングだった。ラブコメっぽい感じで楽しめる。
考察的な観点では、三途の川のようにキラキラと輝く飛行艇の集団から、マルコは追い出されて生きているのだが、それがマルコが豚になった理由なのかな。軍の飛行艇乗りにとって殉職は名誉あることで、仲間のように死にきれずに賞金稼ぎをして醜く生きている私は豚ですよ、ってこと?
↑赤い豚=共産主義者への蔑称だから、宮崎駿にとってむしろ豚は誇らしさの象徴というのが通説らしい。
(2021.8.8)
飛べない豚はただの豚だ。