アーヤと魔女

アーヤと魔女

  • 視聴者数:233
  • 評価数:-
2020 NHK, NEP, Studio Ghibli
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感想

全体
良くない
映像
普通
キャラクター
良くない
ストーリー
良くない
音楽
普通

はじめに

日本語吹替版を視聴しました。
スタジオジブリ初のフル3DCG作品として、その果敢な挑戦と圧倒的な映像美に光る魅力がありつつも、演出や構成の課題が惜しまれる一作です。
その中でも、作品から絞り出した魅力的なポイントを挙げつつ、気になったポイントについても切り込んでいきます。


良かった点

  • スタジオジブリの歴史における偉大な挑戦
    これまで築き上げた手描きアニメーションという確固たる看板を下ろし、全く未知の領域であるフル3DCGへ足を踏み入れたその圧倒的な挑戦心はまず讃えるべき点です。作品全体としては課題も残る結果となりましたが、この大いなる実験と模索があったからこそ、作り手側は3D表現の可能性と難しさを肌で知るという非常に大きな知見を得たはずです。事実、2026年現在に至るまで再びフル3DCG作品を手掛けていない点も含め、スタジオジブリの歴史において極めて重大な分岐点であり、価値ある一歩だったと評価できます。

  • 繊細な「質感」と「光」の映像美
    3DCG技術が遺憾なく発揮されていたのが、リアルな描写力です。ジーンズの生地に刻まれた縫い目の一つひとつ、エプロンに付着した魔法の薬品のリアルな汚れる質感、そして窓から部屋の隅へと柔らかく差し込む光の陰影など、細部が高いクオリティで作り込まれています。

  • 物語と感情を高揚させる質の高い音楽
    劇中BGMや挿入歌のクオリティも光っていました。とりわけ終盤のバンドの楽曲は否応なしにテンポと感情を高揚させてくれます。エンディング・テーマ「あたしの世界征服」は、印象的な映像とキャッチーな楽曲が見事に噛み合い、主人公アーヤが持つ天真爛漫さやたくましさを印象づけていました。バンドの歴史を紐解く流れから「ここから一体どんな新しい展開が始まるのだろうか」と胸を躍らせる瞬間の熱量は間違いなく本物でした。


悪かった点

  • セリフ回しの違和感とキャラクターの不自然さ
    美点を覆い隠してしまうほどの最大の致命傷となっているのが、日本語吹替版における「セリフ回し」の違和感です。まるで英語の原文をそのまま機械翻訳にかけて棒読みさせたかのようなセリフ、指示詞(「これ」「それ」「あれ」)や語尾の不自然さが物語の終盤までずっと続きます。キャラクターの口から発せられる言葉に感情や生活感が乗っておらず、声優さんがマイクの前で無機質に台本を追っている光景が透けて見えてしまい、キャラクターに命(魂)が宿っていないと感じさせる最大の要因になっています。

  • 消化不良感の残るストーリー構成と閉塞感
    全編の8割近くが家の中という限定された閉塞的なロケーションで展開するため、画面の変化が乏しく、序盤で回収されると思われた魅力的なキャラクターとの関わりも不十分なまま棚上げにされてしまいます。物語がようやく動き出し、バンドを巡る真相や魔法の深みへと入っていく一番面白くなりそうな局面で突如として物語が畳まれ、呆気なく幕を閉じてしまう構成には思わず「えっ、もう終わり?」と戸惑いの声が漏れてしまいました。

  • 世界観の説明不足とリアルな3DCGとの相性の悪さ
    魔法が存在する価値やルール、飼い猫が言葉を話す理由などの背景説明が極めて乏しく説得力に欠けます。主人公アーヤに関しても人となりやバックボーンが掘り下げられないまま挑発的な行動を繰り返すため、感情移入の足がかりを見失ってしまいます。また、限られた空間とすっからかんなストーリー展開に対し、手描き特有の「嘘(デフォルメ)」が効かないリアル寄りの3DCGを採用した結果、画面全体が重く暗い印象でした。魔法の演出も説得力のなさから淡白な印象に留まり、記憶に残りにくいです。


総評

「意地悪な大人にも、真っ当で魅力的な過去やドラマがある」というテーマや、バンドの音楽が持つ躍動感など、光る原石は確実に存在していました。

フル3DCGによる質感の追求や楽曲の素晴らしさという見事な「素材」がありながらも、翻訳劇のような脚本の拙さとあまりにも不完全燃焼なストーリーによって、そのポテンシャルを活かしきれなかった非常に惜しい一作です。

視聴記録:2021-12-31

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