サービス開始日: 2021-09-06 (1554日目)
宮部みゆきの小説を原作とする映画。112分。
両親が離婚してしまった少年と、自分以外の家族を失ってしまった少年がその運命を変えるべく異世界で全部集めれば自分の願いを一つ叶えることができる玉を求めて奔走する物語。
【良い点】
うーん。意外と挙げるのが難しい。
自分の欲望のために他者を犠牲にしてはいけない、みたいなメッセージなのかな。物語上で他者にあたるのがビジョン=世界であることから、自集団の利益のために他集団を犠牲にするのはどうなの?という提起なのかも。
夏の家族向け映画みたいな風体だが、少年達の置かれている状況がとてもシリアス。妹がその日描いてたであろう絵にべったりと付いた血や、自宅がバリケードテープで覆われ両親と妹が救急車で搬送されるところを目撃した時の芦川の表情など、シリアス描写が秀逸。
作画がとても良い。現実世界での少年の細やかな身振り、ビジョンでの大胆なアクション、どちらも素晴らしかった。ちなみに、本作は作画wikiの作画アニメに名を連ねている。
色彩も特徴的で、特に現実世界の空の色が他のアニメ作品に比べ一段濃く、印象に残る。リアル(私たちの世界)でもこれほど青い空を見たことがあったっけとなるほどだが、不思議とリアルとかけ離れているとは思えない。あった気がする群青の空。
【悪い点】
ビジョンに入ってから芦川との最後の対峙までの仲間との異世界冒険に必要性を感じない。冒険が主人公にも芦川にも何の影響も与えていない。
異世界での冒険が少年の心を成長させたみたいな運びだが、冒険がダイジェストでさらっと流されるから成長に寄与している感がない。
最後に、自分の願いでなく、世界(ビジョン)の破滅を防ぐという選択を主人公がするわけだが、元々心優しい少年が心優しい選択をしただけなので、そこには成長もないしカタルシスもない。
虚無な異世界冒険に尺を食われてしまったせいで、主人公の両親の離婚を止めたいという想いが強く伝わってこない。というか、上では主人公も玉を追い求めてるかのように書いたが、実際は玉を自ら追い求めているような描写はほぼなかった気がする。その場のイベントに沿って流されるように場所を転々としていたような。異世界冒険がコメディ調で描かれるのもあってか、主人公の想いはその程度なのかとなる。
自分の願いのためにビジョンを犠牲にする芦川と、自分の願いを犠牲にビジョンを救う主人公という対比。最終的に芦川は死に、主人公の願いが叶うわけだが、うーん。そもそも、主人公と芦川の境遇に差がありすぎる。流石に、死人を生き返らせたいのと、父親を家に引き留めたいのでは、他者を犠牲にしてでも叶えたいという気持ちの強さに差は生まれるだろう。主人公も芦川と同じ立場になった時に、自分の願いを諦められるのかという話になる気がするし、どうもこの作品が伝えたかったことがわからない。
【総合評価】
最初と最後だけあればいいみたいな映画。中盤の冒険が機能していない。
異世界を犠牲に自分の願いを叶えるか否か、みたいなアニメは他に『星を追う子ども』とか『ディバインゲート』(これは異世界でないかも)があるけど、軒並み酷いのは何でなんだろう。
評価は、「悪い」
エロゲ原作
全2巻からなるovaの2巻目
剣の声に導かれるように転移、異世界で戦いを強いられる点で『IZUMO』と酷似
【良い点】
設定自体は面白そう。
最後、主人公と確執ありげなライバルキャラも異世界転移していることが発覚。現実での確執を異世界で清算する、という話型はこの手のアニメでありがち。『IZUMO』然り『アラタカンガタリ』然り
あるキャラが主人公のことをパパ呼びするところ。パパ呼び自体が良いのではなく、妖精は家族を持たないからその憧れの延長でパパと呼ぶようになるというドラマが良い。必然性のある"パパ呼び"。
【悪い点】
尺の都合上しょうがないかもしれないが、あまりにも場当たり的な展開が続く。伏線がなく、ただ筋を追っているだけで面白くない。妹を攫った帝国側のキャラももう少し前の段階で印象付けて置くべきだったのでは?と思わなくなもない。
場面間の繋ぎが無理矢理でスムーズでない。頭に話の流れが入ってきにくい。
反帝国を掲げる隣国と同盟を結ぶことを交渉する際、妖精の話を持ち出したのが謎。そもそも妖精の話なんかしていなかったのに唐突に持ち出して、そのせいで交渉が決裂するって、本当になんなんだ。
「妖精に頼る限りこの世界に平和はない」「妖精だけに痛みを強いることが既に本質から外れている」と言うけど、隣国が妖精を酷使している背景なんて説明されてないし、王国側も普通に駒使いしてたじゃんとなるし。この話はなんなんだ。まるで成立していない。
多分、妖精を使役するのではなく真の共生を目指すのがこの作品の大筋の一つなんだろうけど、悲しいかな2話しかないのでそこまで進むはずもなく。
何れにしても話が序章よりも前の部分で終わっているため、得るものがない。
【総合評価】
話が序章の序章で終わってるし、単純に面白くないし、妖精関連の話もライバルとの関係も何も進展してないしで普通に酷かったなと。
評価は、「とても悪い」
エロゲ原作
全2巻からなるovaの1巻目(※1巻目なので評価は保留)
剣の声に導かれるように転移、異世界で戦いを強いられる点で『IZUMO』と酷似
【良い点】
妖精を駒として戦をする世界で、何故に人間である主人公が剣の声に導かれ、転移し戦うに至ったのか?気なるところではある。
【悪い点】
進行が雑。
冒頭の、異世界でモンスターが戦うシーン、妹の乗っている飛行機が墜落するシーン、幼少期の主人公がトンボを追いかけているシーンが交互に映し出される演出意図がよくわからない。
1話あたり8分のホラー小咄が3本
3本共通して、恋する女の子の元に薔薇柄のワンピースが届き、ワンピースを一度着たら最後、女の子は不幸な運命を辿ることになる。
監督は京アニ『空を見上げる少女の瞳に映る世界』の木上益治
【良い点】
絵が良い。水彩画っぽい背景美術に淡い色彩設計で、素朴で上品な雰囲気が出ている。
レイアウトもとても凝っている。
ワンピースの禍々しさは表現されている。ワンピースの出自は具体的に明かされなかったが、何かとんでもないものといこうとはわかる。意中の男の目を奪うために、首を掴み強制的に顔をこっちに向けさせたり、窓を突き破り落ちたり。男がワンピースを着ている様を褒めてくれたことから、ワンピースが肌と同化するようになったり。死んだ彼の元へ連れて行ってくれたり。
オチが三者三様。ワンピースの呪縛からは逃れられたが、クローゼットからは確かにその存在が感じられる1話目(更に、男の引越し先の街でもショーウィンドウに飾られている)。ワンピースが肌と同化し、本人から生気が感じられなくなった2話目。ワンピースのせいで亡き人となったが、死んだ彼と二人になれて本人はさぞ幸せであろう3話目。
ワンピースのせいで離れ離れとなってしまった(もし、ワンピースがなければ二人は両片思いだったためいずれ付き合うことができた)1話目と、ワンピースのせいで死んでしまったが一緒になることができた3話目、対照的で面白い。
恋する乙女の素朴な可愛さが表現されている。
特に1話目の祐子。高身長で、グループでは端の方にいる大人しい女の子。そんな子が明るく誰とも分け隔てなく接する陽キャ男に黒板を代わりに消したことを感謝された、ただそれだけで恋に落ちているのがかわいい。大人しい子が、みんなに好かれる優しい陽キャ男に惚れるのがあまりにも癖。そんな二人の恋がワンピースによって引き裂かれるなんて、これワンピースというモブ男によるBSSキャンセル行為だろ。余計なことすんな!
【悪い点】
ワンピースの出自が明かされなかった。ホラーだから有耶無耶にして終わらせる方が怖さを残せるっていうのはわかるが、考察できるヒントがもう少し欲しかった。あの黒い影は何だったんだろう。
【総合評価】
感覚的に得られる怖さがあったかというと微妙だが、ワンピースの禍々しさは表現できていたと思う。絵が良く、女の子も等身大な感じで可愛かったため総合的な満足度は高い。
評価は、「良い」
全12話、エロゲ原作の戦記物+少し恋愛
【良い点】
ラスボスたる卑弥呼の目的が序盤から明かされている。テンポが劣悪でどうでもいい話に終始していたが、卑弥呼の目的とそれを阻もうとする主人公という点は一貫していたため、非常に退屈ではあるが最後まで見ることができた。
全体の構造は理解できる。卑弥呼はその伴侶であるスサノオなどと共に、争いの絶えない世界を間違った世界と見なし、世界を一回無に帰そうとする。この目論見を今ある世界を守ろうとする対抗勢力となるアマテラスたちは阻止しようとし、争いに発展する。争いの最中、スサノオは卑弥呼を庇い死に至ったが、世界の創造主たる卑弥呼は能力を使いスサノオの魂をアシハラノクニに送る。魂は大きすぎたため二つの器に分配され、その器となったのが猛と剛だ。卑弥呼は愛するスサノオとの再会を果たすため、猛と剛をネノクニへ呼び寄せる。ネノクニにやってきた猛と剛はそれぞれアマテラスと卑弥呼の側に与して戦いに巻き込まれる。この際、卑弥呼は世界を無に帰すことよりも、スサノオと再会することを第一に考えているようだ。猛と剛に眠るスサノオの魂もまた、独り身となった卑弥呼のもとへ戻ろうと、猛と剛の闘争心を掻き立て、両者が接触するように働きかける。魂が意識的に操作しているというより、どちらかが死ぬことで二つに分かれていた魂が統合され、スサノオが復活することを無意識に理解しているから、そのような働きかけが起こっていると思われる。最終決戦で猛と剛が剣を交え、ついに決着がつこうとしたとき、あたりは光に包まれ精神世界へ移行する。精神世界でスサノオは、自分がいなくとも剛が卑弥呼を支えてくれると考え、自ら成仏した。
【悪い点】
とにかくテンポが悪く、展開にメリハリがない。山場となりうる場面でもテンポが一定で、常に退屈。
一番疑問に思ったのは、スサノオが「剛に卑弥呼を任せられるから未練なく黄泉の国へと旅立てる」と言っていたこと。剛が卑弥呼のことを想い、愛するに至るまでの描写が完全に欠落しているため、説得力が全くない。剛は、最初は卑弥呼の理念に賛同せず、猛と戦うという私欲のために卑弥呼側に与していた。卑弥呼と共に過ごしているうちに、徐々に、あるいはあることをきっかけに卑弥呼のことを意識し、好きになる描写があればいいのだが、それがない。いつの間にか好きになっており、最終話ではスサノオしか眼中にない卑弥呼に憤りを覚えるほどになっている。剛と卑弥呼の関係を示す描写が最終話以外は全くと言っていいほどないため、いつからそこまで強い感情を抱くようになったのかわからない。このように構造は理解できるが、説得力が全くないため、本筋が成立しているとは到底言えない。そしてもし、剛と卑弥呼の関係をきちんと描けてたとしても、面白い話にはなっていないだろう。世界の存続に関する対立と、猛と剛の対立という序盤から提示されている要素をなおざりにして、未亡人に新しい伴侶が見つかるというこの舞台である必要がない話にしたのは本当にどういう判断なのだろう。
卑弥呼も卑弥呼で、世界を無に帰すという悲願が成就しなかったことを悔いる描写も、受け入れる描写もない。
猛と剛についても、最終決戦で相対した時点では二人の溝は解消されていなかったのに、精神世界から戻ったらお互いの気持ちがわかるようになったらしい。なんで?としか言いようがない。最終決戦で、剛は猛に対して憎いとしか言ってなくなかったか。拳で語り合うことで相手の気持ちがわかるようになったのだとしたら理解はできるが、何も視聴者側が得るものがない(カタルシスがない)。二人の関係がこの作品の肝の一要素であったと思われるが、まともに解決に至ってない(解決しなくともしっかりと対話している描写があれば満足できると思う)のはどうかと思う。
道中の、四聖獣の話もヒロインが黄泉比良坂に送られた話も必要だったとは思えない。ただ尺を埋めるためにテキトーなイベントを配置しただけに見える。特に、黄泉比良坂の話は今まで恋愛要素を全く出していなかったにもかかわらず、急に回想まで入れてヒロインの話をし始めた。恋愛要素を取り出したのならその後の展開に活かされるのが普通は予想されるが、それ以降主人公とヒロインに関する恋愛的な話は一切出てこない。その場限りの”情報”でしかなく、ストーリーというものがつくれていない。主人公たちを裏切った女が贖罪の意味も込めて同行したいと言った際、一度は険悪な雰囲気になったのに以後そのことについて触れられないのも同様だ。その場限りの情報にしかなっていない。
作画に関しては、トライネットらしい低予算感あふれる画面だが、そこまで崩れはしていない。アクションは動かず終始モッサリした印象を受ける。
【総合評価】
作品の一番重要な部分の表層にさえ触れず、雰囲気だけハッピーエンドっぽく終わった。
本当にひどい作品だった。
評価は、もちろん「最悪」。
全12話、事故死して幽霊になった伝説のアイドルとその妹、レシピエントが自己実現を果たそうとするアイドルアニメ
【良い点】
琴乃とさくらが自己の確立を目指す物語がいい。
琴乃は長瀬麻奈の妹ということもあり周りからは比較され、自分でも麻奈の心残りを晴らそうとその代わりを務めようとしていた。しかし、麻奈の歌声を持つさくらの存在が世間に認知され始めたことにより、自分の存在意義が揺らぐ。自分ではなく、さくらが麻奈の夢を叶えてくれるんじゃないかと。目指すものがなくなった琴乃に対し、グループのみんなは「今の間は私たち月のテンペストのグランプリ優勝を目標に歌って欲しい」と言う。そして、「琴乃ちゃんの歌声を、琴乃ちゃんの歌声が一番だと思ってるみんなで一緒に、みんなのために優勝を目指そう」と言う。ここはジーンと来てしまった。特に「琴乃ちゃんの歌声が一番だと思ってるみんなで」の部分、これほど琴乃の存在を肯定する言葉があるかっていう…姉に囚われていた琴乃を姉の代わりとして生きるのではなく、琴乃として生きてみようと琴乃自身がそう思えるような言葉だったと思う。
ここで気になるのは、さくらもさくらとして生きていけるのかという点だ。麻奈の心臓を移植されたさくら。その影響か、さくらは麻奈と似たような歌声を出せるようになった。世間からは、麻奈の歌声と似ているということで祭り上げられ、麻奈に似ていることが評価され求められる。そして、同グループの琴乃からさえもグランプリ決勝で"麻奈の歌"を、3年前のあの日を再現することを求められる。自分がそう願ったのではなく、他者の願いのために麻奈として歌うことになる。
そもそもアイドルを始めることになったのも、心臓に導かれるように星見プロダクションに足を踏み入れたからだ。心臓移植により歌声だけでなく、意思までもドナーに侵食されたと言っていい。そしてもし、他者の意思によりただ突き動かされていることを自覚していたとしたら、自己同一性をどう保てようか。自分の命を繋ぎ止めてくれたという恩があるからと言って、自分の人生を自分の意思で生きることを諦めることなんてできるのか。
これに対し、麻奈(幽霊)は"麻奈の歌"を歌わない方がいいと告げる。観客は歌手が本当に自分が歌いたくて歌っているのか、敏感に察知するからだそうだ。そして、向かい合うべきは、琴乃や麻奈ではなく応援してくれる人だと。
更に、麻奈はさくらに、アイドルを始めたのは自分の意思ではなく、心臓の導きによってなのか問う。さくらはこれを肯定するが、心臓の導きは始まりを与えてくれたきっかけにすぎず、アイドルを始めてからみんなと出会い目標を追いかけるようになったのは自分の意思によるもので、自分の本当にやりたかったことはこれであると断言する。そして、心臓の導きがなければ本当にやりたかったことにも巡り会えてなかったと麻奈(の心臓)に感謝し、心臓の導き含めて川咲さくらを構成しているとした。だからこそ、麻奈の心臓を一部にしているからこそ、"麻奈の歌"を舞台の上で歌いたいと麻奈に訴える。
が、麻奈は"麻奈の歌"は麻奈だけの歌であるから自分自身で歌う必要があると言う。アイドルとしての矜持みたいなものが垣間見えるね。そして、さくらと琴乃二人にも自分だけの歌を仲間と共に探し、頂点を目指してほしいと言った。
決勝ステージ、舞台の上で感じた「私自身のドキドキ」は、誰かによって導出された胸の高鳴りとは、また違うものだったろう。
大好きなお姉ちゃんがアイドルになったことにより一緒にいる時間が減ってしまい、その悲しみから「お姉ちゃんなんかいなければよかったのに」と口走ってしまった過去。だけど今なら言える、お姉ちゃんがいてくれて、お姉ちゃんがアイドルで良かったって。お姉ちゃんがアイドルだったから、自分もアイドルになることを決意し、その過程で自分の本当にやりたかったことが見つかったと。
牧野くんと麻奈の話はエロゲーっぽかった。最後のキスして消えるやつとか泣きゲーにありそう。
キャラは見た目含めアイドルソシャゲに出てくるモブキャラっぽさがある。特に青い髪の子とか目隠れショートの子とか黄髪の子×2とか。サブキャラに関してはフィクショナルな感じが目立つ。
メインの子には魅力があり、特にさくらは見た目から元気系かと思いきや、明るさと落ち着きと儚さを同居させたキャラで不思議な引力があった。
作画は1話は良くて、それ以降は若干低調気味で平均よりちょい下くらいの作画を維持していた。
最終2話はレイアウトが凝っており作画も良かった。
ライブシーンの作画は、アップの時は手描きで引きになるとCGになるパターン。アップの時の作画はよく動いていて見入ってしまう。
OP、ED、劇中歌全部良い。特に、月のテンペストがセミファイナルで歌った曲は、クールイメージのグループが王道アイドルソングを歌うギャップがあり良かった。
【悪い点】
本戦出場と言われても、努力している描写が少ないためご都合感が強い。新人中の新人にも関わらず、とんとん拍子で勝ち進んでしまう。見ていて、この子達の秀でている部分を見出すことが出来ず(さくらには麻奈から授かった歌声があるが)、勝ち進んでいることへの説得力が薄い。月のテンペストとサニーピースが決勝に行くのは物語の都合上目に見えててそれまでのバトルがただの作業に見える。
そして決勝、同点という、でしょうねって言う結果。すべてが予定調和。「まさかこんな展開になるとはな」とかいうメガネのおっさんのセリフ、ツッコミ待ちとしか思えない。
ただ、ここでどちらかが勝つなんて結果には絶対してはいけなくて、琴乃もさくらも麻奈に囚われ、自分の意思を抑圧していた存在だ。みんなと出会い、切磋琢磨するうちに自分の本当にやりたかったことに気づき、自分の意思を持つことができた。この物語を通じ、自己の確立を遂げた両者に勝敗をつけることなんてできないだろう。だから、この同点という結果はとても誠実なんだけど、現実の厳しさが反映されたアイドルアニメを求めて見ると、ぬるいとなる。
自己確立の話に関しても、「自分の意思でアイドルをしたいと思う」に至るまでの心の変遷や、アイドルへの想いが十分に描写されていないため、納得度が薄い。
アイドルを志す理由が台詞では説明されるが、具体的な描写に表れていない。観客を楽しませたいと口では言うけど、楽しませたいに至るまでの描写が希薄なので空虚に思える。アイドルのパフォーマンスを楽しむ観客と、その楽しむ姿に感銘を受けるアイドル、みたいな描写があれば楽しませたいに繋がると思うんだけど、それがないので実感が伴わない。
【総合評価】
琴乃さくら周りの自己確立の話は良かったが、アイドルアニメとしてはご都合感が目立つ。自己確立の話の核があったのは8、9話でその時点では結構好印象だったんだけど、その後のご都合展開で好印象を打ち消してしまった気がする。
評価は良いよりの「普通」
全12話、ソシャゲ原作で日中合作の1話4分のショートアニメ
平安時代の安倍晴明周りの人間や妖怪の日常を描くショートコメディ
2話までは妖怪の習性を面白おかしく解説する『奇異太郎少年の妖怪絵日記』的なアニメと思いきや…その後は原作キャラがわちゃわちゃしているのを楽しむアニメといった感じ。
【良い点】
1話のだるまの回は面白かった。この世界には意思を持つだるまが存在するらしい。平安京を訪れた2体のだるまは、そこで暮らす者たちに物珍しがられる。人間と妖怪が混在するこの世界でもだるまは異様な存在なんだとなるし、だるまだけcgなのも異様で笑う。平安京で暮らす者達は、手を持たないだるまがどうやって食事をするのか気になって仕方がない。各々考察し、賭け勝負にも発展するが、答えはなんと一方のだるまがスプーンを口に咥えもう一方に食べさせるというものだった。意外性があるし絵面がシュールだ。その後、だるまが中々寝ないからいつ寝るかを観察するくだりがあり、結局最初から寝ていたことが判明する流れもベタながら良かったと思う。
【悪い点】
キャラの性質を知っている上でのギャグが多いくせに、キャラの性質が十分に説明されない。つまり、キャラの性質を前知識として持っている原作ファン向けのアニメ。加えて、エピソードごとにメインキャラが変わるため、アニメ内でどういうキャラなのか理解を深めることもできない。一応、現実に存在する人間や妖怪も出てくるがその性質には触れられず、ただキャラの言動から読み取れる記号的な性格があるのみ。
問題が提示されるが有耶無耶になって終わるパターンが多い。コメディだからこそ成果が得られないことが笑いになるのは分かるのだが、問題の内容がテンポのぎこちなさもあってか分かりにくいため面白くなっていない。
監督がベテラン・アミノテツロということで映像面は期待していたが、レイアウトは普通で、作画もよく動くといったところはない。ショートアニメだと、目を見張るカットがいくつかあるだけで満足度がグンと上がるので、それがないのは残念。
【総合評価】
原作ファン向け。ギャグは弱く、テンポも少しぎこちない部分があった。
評価はとても悪いよりの「悪い」
1話あたり18分30秒という珍しいアニメ
11話まで視聴
前半クールは1話完結のエピソードで構成されていて、主人公と各ヒロインが関わり、少しだけヒロインの主人公への想いが強くなるというのをコメディを絡めてやっている。今の時点では主人公は各ヒロインに対して恋愛感情を抱いていないが、義妹の音夢に対しては「音夢は妹だから」と自分に言い聞かせる描写が頻繁に差し込まれ、少し意識してるようにも見える。
淡い色彩設計と、カチッとしてない柔らかいキャラデザから繰り出されるコメディが持ち味。緩く、シームレスに行われるギャグはデ・ジ・キャラット感があり、ギャグアニメに代表される「ここが笑いどころだよ」みたいな間がないぶん素直に笑える。やっぱこのアニメの特色はそこはかとない緩さだと思う。類似のエロゲアニメを見たことがない。同じコメディ偏重のエロゲアニメだと「Φなる・あぷろーち」や「つよきす」が思い浮かぶが、あっちはドタバタギャグで激しさが目立つ分、ダ・カーポの異様な緩さが際立つ。同監督作品の「最終試験くじら」くらいか。似てるのは。
話に関して言えば、1話完結のストーリーの中で無理矢理大きな進展を描いていないのがいい。例えば、歌が上手く、人の心の声が聞こえるヒロインのことりは、主人公を文化祭の声楽部の出し物に誘う。しかし、主人公は義妹と文化祭を回ることも約束してしまい、後からダブルブッキングしてしまったことに気づく。悩んでいる主人公を見かけたことりは心の声を聞き、出し物は中止になったと嘘をつくことで、負い目を感じさせずに義妹の方に行きやすいようにする。ここで、普通なら何かしらことりも報われる形で話が終わりそうだが、このアニメでは、ことりが一人教室で主人公が来てくれなかった悲しみを歌に乗せて紛らわせているところを、主人公が廊下で見かける(ことりは主人公に気付いていない)ところで終わる。ことりは人の心の声が聞こえない方が幸せを得られるのではと結論づける。コメディシーンが多く挟まれる本作だが、こういう問題を簡単に片付けず、ハッピーエンドで終わらせないところがいい。