キシリカ拘束から流れるように連行、そのまま始まるOPが葬式みたいな雰囲気で面白い。
今回アトーフェとザノバの交戦で、アニメとして初めて闘気について言及があった。初めてらしい。闘気は簡単にいえば魔力を使った身体強化の技術で、(気分としては)魔力によって細胞レベルで肉体を強化することであらゆる身体能力を強化するというもの。これは剣士を含め物理職には必須の技能ということになっており、原作ではルディがフィットア領でエリスの家庭教師をしていた頃、既にギレーヌからエリスが闘気を纏い始めたことに触れられていた。ラノア魔法大学ではバーディガーディとの対話でルディが(ラプラスと同様)闘気を纏えないせいで剣士として才能がないと宣告されているのだが、アニメではどちらも省かれてきた。今回ザノバやアトーフェがやたらと頑丈だったのは、ザノバは神子としての強靭な体に加え闘気を纏うことで物理攻撃に対して異常な耐性を持っているし、アトーフェは尋常ではない闘気によって肉体を強化しているせい。
闘気は魔術も軽減できるため、極端に闘気の強い者には攻撃魔術も効きづらい上、アトーフェは夫である初代北神カールマン・ライバック(ペルギウスとともに魔人ラプラスを封印した三英雄)から手ほどきを受けており、筋は良くないが北帝程度の腕前はあり、岩砲弾を叩き落とすくらいの技量はある。ムーアについてもアニメではルディの魔法を食らってから対抗魔術を詠唱していたが、原作では杖を構えた時から既に詠唱を開始するくらいに対抗魔術の熟練者であり、各種魔術を軽減する鎧によって魔術によるあらゆる妨害がレジストされていた。だから、アホみたいなやりとりで大したことない戦闘に見えるが、実際は絶体絶命だった。そこで、闘気を無視して麻痺効果を与えられるエレクトリックで足止めをしたということなのだが…さすがにStudioBindでも雰囲気までになってしまう。マナタイトヒュドラから採取した吸魔石も今回ここでザリフの義手に組み込まれて一応使われた。エレクトリック後にムーアからクリフに放たれた魔術を打ち消した「腕よ、吸い尽くせ」は吸魔石を起動するもので、ディスタブマジックの強化版のように発動後の魔術すら打ち消すことができる。もしかしたら後半クールでこのあたりまとめて補足があるかもしれないが…
今回、オルステッドも使った前龍門、後龍門を召喚する際のペルギウスによる「三番目に死んだ龍。最も鋭き瞳を持つ、白銀鱗の龍将。甲龍王ペルギウス…」という詠唱。これまたアニメではスキップされているのだが、原作ではフィットア領で獣人語、魔人語を学んだ際に、実はこの世界の神話・歴史についてわりと細かく記載されており…太古にあった7つの世界と7柱の神、そこで龍神と相打ちになった五龍将についても述べられている。三番目に死んだ龍。前回ケイオスブレイカーにあった壁画と重ねれば多くのことがわかるだろう。
単なるアホのやられ役にしか見えないアトーフェも、このカールマンの妻、バーディガーディの姉、キシリカの将来の義姉という人間関係から意外なほど重要人物である。ナナホシを救うためのちょっとした魔界へのクエストの背景にも膨大な歴史と設定が詰まっており、それらが垣間見えるのは面白い。
こんな風に、原作を読んでいると多数の設定や心情描写が省略されているのだが、その上でも楽しめる形になっている上に、原作既読勢がこのように蘊蓄を垂れ流したくなるようなフックは映像にきちんと埋め込まれている。それがこのアニメ化の優れたところだと思う。
そして次回はターニングポイント4。これまでの長い物語の見方が根底から覆る、その始まり。