鬼太郎の出生や猫娘の原型など、興味深いエピソードが多い。
仲良くなった人間も妖怪も呆気なく死んでしまうこと対する鬼太郎の執着や悲哀が希薄なのが面白かった。鬼太郎が幽霊族の生き残りで普段から地獄とこの世を行き来しているために、人間の生死を重く見ていないということだろうと思う。女性への執着だけは多少強く鬼太郎が持っているのもよかった。
彼我を跨ぐ者にとっては儚い人間の生はそれほど重要に思えないのだろうし、その上で善悪の区別なく俗世にまみれていく鬼太郎とねずみ男が印象的だった。
戦争の地獄を経験した水木しげるの死生観や生物や霊的存在への眼差しが現れている作品のように思えた。
戦後期から高度成長期に時代が移ろう昭和30年代の日本社会も風景ごと見事に活写されていたように思う。