硝酸と硫酸による有機化合物のニトロ化……その手があったか。なまじ少量の火薬を作るよりずっと威力がある。このニトロ化の反応では硫酸が酸として、硝酸が塩基として働く。ニトログリセリンは危険な爆薬でありながら心臓病の薬にもなる、まさに科学の人間にとっての多面性を表す象徴的な物質。
司にそんな背景があったとは。単に科学文明と社会を否定していたのではなく、妹の病気を治すために格闘家として金を稼いでいたと。
確かに、一気に石像を復活させればその人数を支えるだけの食糧生産力も社会基盤もない。となれば、総生産力の規模に合わせて計画的に人口を増やすしかない。円滑に進めるためには優先的に復活させる人選も必要だろう。
この方針で行けば司が罪を背負って石像を破壊する(浄化する)必要はないのでは。