とてもつらい展開。
エリアスもルツも人の倫理観がギリギリの所で分からないでいる。最も失いたくないもののためにその友を犠牲にしようとした。しかもエリアスは、ステラへの嫉妬を生け贄にする理由にした。
人の倫理において、そんなことで限りある命を奪っていいはずがないというのに。エリアスがドラゴンではなくステラを選んだのは、ほんの僅かな恨みすらドラゴンに対しては持ち合わせていなかったからだろうか。
エリアスがチセに求めているのは、自分だけを見てくれる存在であること。それは究極の利己だけど、幼児のそれと同じでもある。その思いは純粋な心のコアではあるけど、押し通せば破滅を招くものでもある。エリアスがチセと寄り添って生きるためには、成熟した人の心を身につけて行かねばならない。
とはいえ、エリアスもルツもチセを助けるために差し迫った状況で、信念からの行動ではなく判断を誤ったのだろうとも思う。往々にして、肝心な時にこそ心の未熟さは露呈するものだから。また、正しさだけでは生き延びられない状況も、悲しいけれど存在する。
さて、目下はチセがどうやって生き延びるか。
カルタフィルスの取り引きに応じたようだけど、一筋縄というわけには行かないだろうし、茨の道が待っていそうだ。