原作の杉浦日奈子さんはNHK「お江戸でござる」の解説コーナーで江戸風俗を紹介されていて、おっとりした雰囲気の女性だと思っていたのだけど、Wikipediaを読んでとても感性鋭く生きた気鋭の漫画家、エッセイスト、江戸風俗研究家だったのだと驚いた。46歳で早逝されたのが悔やまれる。
このアニメ作品は2015年公開ということで、原作者の死後10年が経っているものの、背景美術も人物の服装や髪型、おそらくはプロッブデザインに至るまで、原作者の意を汲んだかの如く、時代考証がしっかりしているように感じられる。
そして、落ち着いた飄々とした作風が心に染み渡った。早くから自身や人々の生死と向き合ったであろう原作者の北斎とお栄への眼差しが反映されていると感じられるし、実際に二人がこのような性格であったかのようにも思えるほど、説得力のある描写に舌を巻いた。
文化文政期の文化が最も庶民にまで浸透し、輝きを放ったであろう時期の江戸が活写されている。
確かにそこで町人達が生を楽しみ謳歌し、様々な想いと感性を抱いて暮らしていたことをありありと感じることが出来る作品だと思う。
そして、北斎とお栄の絵師としての社会との関わりと少し浮世離れしたような生き様も、独特の雰囲気を纏いながら、現実と空想が繋がるファンタジックな描写とともに見事に表現されていると思う。