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全体
とても良い
映像
とても良い
キャラクター
良い
ストーリー
とても良い
音楽
とても良い

昭和31年の時代背景の描写がまず素晴らしい。
オフィスも汽車の客車内も、咳をしている子供が居ようが関係なくタバコの煙が濛濛と立ち込める、戦後昭和の混沌の空気感。
高速道路もなく、全国津々浦々まで舗装道路さえ整備されていなかった時代、秘境のような村は幾つもあっただろう。そして、有力者の村と屋敷、一族の跡目争い。

となると、横溝正史の得意分野だけど、水木しげるはトリックのある怪奇ミステリーではなく、怪奇現象そのものを社会と融合させる。この世ならざるものを社会の背景に敷く。

この作品は、TVシリーズ第6期をベースにして、ある種、現代的にミステリー化されている。
水木しげるがこのような一大スペクタルを構想したとは思わないが、原作の鬼太郎誕生のエピソードに破綻なく物語を構成して繋げた製作陣に拍手を送りたい。

人間の欲望の醜悪さを極限まで描き、また僅かな希望から立ち上がろうとする人間の善性、精神の破壊と再生、人ならざる者達と人間の関係の在り方とを隠された山村に凝縮させることで壮大で奥行きのある生と死のスケールが表現されていると思う。
人間の主人公に戦争体験を持たせることが、水木イズムの体現にも寄与しているかと。

水木さんの画風を踏まえた背景美術、戦闘シーンの動き、CG表現、どれも現在のアニメーションの作画技術としてハイレベル。脚本と演出も素晴らしい。
キャラデザに関しては、これまで水木作品がアニメ化されたとき、時代を反映したデフォルメがあったので、その踏襲と捉えれば違和感はないし、原作への配慮も感じられた。

水木しげる生誕100年の記念作品として、一流のスタッフによって手掛けられた、十分に力作と言える作品だと思う。



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