シャーデーの心の弱点の一つはダレスだった。姉としてダレスを支配し続けて来たが故に裏切られるのが怖い。が、それで腑抜けてしまうほど弱くもない。
ザインが敗退。やはり戦闘は避けられない。
心を読めるが故に、坊ちゃんやカフの偽りのない思いに触れると、他者は必ず自分を裏切るという信念と強く結びついたシャーデーの心が悲鳴を上げる。
シャーデーの人間不信は、経験に基づく認知の歪みでもある。人の心は常に矛盾なく揺るがないものではない。邪心や欲望や凡ゆる感情と共に善性もある。生きて行く中で、どの面を強く持つようになるかが決まって来る、それが人格形成だ。その上で、良い人も悪い人もいて、その度合いのグラデーションがある。シャーデーは人間の醜悪な面ばかりに意識を向け、そのグラデーションにこそ価値があることを見出せなかった。魔女ではない現実の人間にも、このようにゼロ百で人を見る傾向を持つ者は多い。
人間は社会を作り、その個体数を増やして来たが故に、付き合う人間を選んで関係性を築く必要がある。良い人も悪い人もいる中で、どのぐらい良い人なのかを感じ取り、関わるかどうかを判断して生きて行く。それこそが社会性の一部としての選択的協調だと思う。
魔女も人間と関わるならば、そのような視点を持たないと敵ばかりが増えてしまう。
シャーデーにとって、坊ちゃんが友達になるに値する人間であること。今の彼女にとってそれを認めるのはとても恐ろしいことだろうと思う。
ダレスと亡きヴィクトル以外に信じられる者が存在しないという強い信念の殻を破る必要があるからだ。