原作があまり刺さらなかったのだが、書店で見かけたPVが良かったので(というかアニメ映画だと知らなかった)鑑賞。
めちゃめちゃに泣いた。キャラクター的でないと全く読みが働かないのだと痛感し恥じ入るばかりである。ただこころの受ける虐めを非常に一貫した主題としている印象があり、原作よりも寄り添いやすい描き方になっている気もする。(原作の細部を覚えている訳ではないので印象論だが。)
まぁ弊害というか、原作だと萌はめちゃくちゃ美少女で目立ちまくり、まさに冒頭で語られるような救いを齎す転校生に合致する一方で、それ故に真田の「政治」にも利用されるという印象だったが、映画だととにかくこころが可愛いので逆転して見えるところもある。アニメ的キャラクターデザインの性か。
思い返してもどこが良かったというのが言い難く、全てがとにかく愛らしかった様に思える。こころの伏し目がちな表情、母親の道を開けて壁に沿う様子、将棋をするマサムネ、ウレシノの「乗り換え」を巡る様々な表情。序盤からそうした芝居が日常描写をそれ自体で楽しめるものとしている。
ヒントの置き方も丁寧で、ストロベリーティーの符合だとかちゃんと見ていれば察せられる様になっている。なお時間については原作だと確かショッピングモールがどうので話が喰い違うという件があったが、映画では記憶を受け取ったこころが気づく形となっている。オオカミ様は「お前次第」と言ったが、戻して欲しくて記憶を見せた様にも思われて切ない場面。
声の演技が実写的だったり、劇伴がやや大袈裟な気がするのは一般向けを意識してだろうか。すぐ慣れるから大した点ではないが。
原作はかなり純文学的で登場人物の容姿(キャラクター性と言えばまずは視覚的記号である)など碌に提示されないのだが、本作はその辺りを見事にアニメ的な読みに応える情報量で強化している。様々な思いやりの姿が描かれた名作である。
しかしこころが可愛かった。終幕後に配布特典のスライドショーがあったが、可愛すぎて妙な衝撃があった。