17歳の女学生・花村紅緒と、軍の将校・伊集院忍、2人の出会いから結婚までの激動の人生、そしてその周りの人々を描いたとても面白い作品だった。大正時代だから現代とは価値観が違うし、特に当時は男尊女卑の思想だったことから、女子である紅緒が様々な理不尽に直面する場面があったけど、男勝りな紅緒がそういう逆境に正面から立ち向かっていったからこそ、重くなり過ぎず、痛快な場面も多かったし、なんだかこっちも元気をもらえる時があった。恋愛がメインの作品ではあるんだけど、この作品では同時に力強く生きていく女性の姿も描いていたと思う。男勝りで、時には破天荒な行動を取りつつも理不尽に向かっていく紅緒、紅緒の友人で失恋を経験しつつも、最終的にはお見合い・婚約も放り投げて、想いを寄せた鬼島を追いかけに満州まで行った北大路環、自分の意志、願いのために行動する強い女性の姿にも元気をもらった。男尊女卑だけでなく、当時は恋愛観も現代とは違うし、中々男子も女子も自由な恋愛をするのは難しい部分もあったんじゃないかと思う。実際、作中のキャラがお見合いに対して愚痴をこぼすシーンがあったし、紅緒と忍が出会ったきっかけこそ、許嫁という自由恋愛とは離れているものだった。きっかけこそそういうものであっても、紅緒と忍は仲を深めて、本当にお互いを愛し合うようになった。それ以降もシベリア出兵を機に離ればなれになったり、ロシアの亡命貴族として日本に戻った忍と別れ、紅緒が彼を忘れようとしたり、そして関東大震災に巻き込まれたりと色々な困難があっても、2人がお互いを想い合って乗り越えていき、最終的に結婚、幸せになった。自由な恋愛、愛の力って素晴らしく、そして美しいものなんだと思った。紅緒と忍、そして2人の周りの人々がこれからも幸せに生きていってくれれば良いなと思う。