ジャンプコミックス28巻収録分。
言わば「アバンは何故生きていたか」という解決編だったので、適度なアニメオリジナルの台詞も含め楽しむことができた。緊迫した回が続いていたところ、久々にリラックスして観られる回だった。
まずそもそも「アバン復活」はアリだったのか?
この「実は生きていた」展開に多少なりともご都合主義が存在することは、この作品を連載当時から愛してきた自分もさすがに認めざるを得ない。しかし、生還することができた理由付けには十分な説得力がある。
状況に矛盾はないし、結果的にとはいえ「フローラがアバンを生還させた」というロマンチックな真相であれば、もう納得するしかない。「アバンは死から蘇ってでも、我々読者(視聴者)に伝えたかったことがあったのだ」と、自分は解釈したいところ。
その、大魔宮での変化を察したフローラ様。
原作では無言だったところ、ノヴァとのやり取りが追加された。大魔宮を無言で見つめるフローラのほうが自分好みだけど、まぁ、台詞があっても悪くはない。「何か感じたのです。あそこに…」とフローラは言ったが、大魔宮で実際に起きていたことはあなたにとっては「何か」どころではないでしょう。
フローラ様といえば、アバンに「カールのまもり」を渡した回想シーンで、向き合うふたりの間の距離が原作より離れた作画になっていた。この距離にもスタッフの意図が何かしらあるのだろうけど、親密さを感じさせた原作での距離のほうが自分は好き。
ここまでの冒険を振り返るシーンが追加。アバンにも、弟子たちの成長を讚える台詞がいくつか追加されている。
特に、紆余曲折あったヒュンケルには、ことのほか長めの尺が与えられていた。アバンがヒュンケルの改心を喜んだことには、他の弟子たちへの言葉にはない意味も込められていたと感じていて、それはかつてレオナが、アバンの使徒として生きることをヒュンケルに命じたこととも関係する。
レオナはもちろんのこと、アバン本人も「ヒュンケルの生き様は、まことアバンの使徒に相違ないものだった」と認めたのが、このシーンの意味だったのではないかと思う。
ところでキルバーンには、聞かれもしないことを喋る一面が以前からあった。
そのおバカ加減をアバンに見破られ、完全に出し抜かれたのは痛快。今まで以上に余計なことをぺらぺらと喋り、墓穴を掘りまくっていたのには笑いが止まらん。「おバカさんだねェ」とはキルバーンのこと。
実力はともかく、駆け引きでは二流。キャラの底は完全に露出してしまったな。