サイコパス10年分の集大成的映画。
以後、ネタバレ注意。
人が戦いを始めてしまう、またはそれを防ぐコードを巡っての一連の事件だったわけだけど、そこからシリーズの根幹であるAIが人間を統治するのは正しいことなのかという話へと綺麗に繋がっていた。
中盤はシビュラ関係なく、とにかく肉弾戦、銃撃戦で。
このあたりの流れは映画一作目にもあったかな。
ドミネーターも効かないし、やっぱり法がないとダメだな、むしろAIなんてあったとて裁くことなんかできないんだなと思ったけど、最終戦で朱ちゃんがシビュラで裁くと宣言していて。
そうだ、朱ちゃんはシビュラはいらないものだと言ってるんじゃない。共存の道を探してるんだって。
それをすごく感じた一連の戦いだった。
あと今回の親玉の告善の考え方ね。
危ないのはわかってるけど確かになあと思ってしまうところもあって。
絶対的ななにかがないと争いは生まれる。
その絶対的なものを人間にすると、その人の感情が入ってしまう。それがない存在は神であり、AIは神に近い存在だと。
ジェネラルは「人間の感情の客観視の部分を切り離し、感情の部分を引き取ることができるAI」だったけど、それって実はたくさんの人がその方が「楽だな」と思ってるんじゃないかとも思ってて。
でもそれって果たして人間として正しい在り方なのかを問われると、やっぱり違うのかなとも思う。
絶対的な存在を、AIを神にしてしまえば、無駄な感情を排除した上で、より平等に裁けるし、より平等な判断ができる。
それもまた、必ずしも間違ってるとは言えない。
その思想と、朱ちゃんのように、人間の手でも裁けるその余地をなくしてしまっては、真の正しさは貫けないという思想のぶつかり合いがこの映画だったかなと。
とはいえ最後の展開は一人の女性だけが背負っていい責務の重さじゃないのよ…
「さあ、クリアな色相を持ったまま人を撃った私を、シビュラは裁けないでしょう?法の必要性を、シビュラとの共存方法を皆で考え続けなさい」
誰にも相談することなく局長を撃ってその問いを投げかける常守朱、凄まじすぎる。
でもラストに、亡くなった人のこと、自分がしたことの重さを感じてわんわん泣く彼女の姿に、人柄を感じて少しホッとした自分もいたな。泣けてよかった。
AIが広がるこの世界への忠告であることはもちろん、作画もさることながらアニメーションとしても素晴らしく、今までを踏襲したからこそ、今まで以上に脳が刺激された作品。
いい映画だった。