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とても良い

月並みな表現なんだけど、あまりに凄まじく濃い内容だった
橙子との関係が進む中で橙子を好きになりたいと思うようになっていた侑。だというのにここに来て明かされた橙子の本心によってその関係性が歪になってしまう展開は驚愕

まず沙弥香が侑にチクリと忠告するシーン。橙子を心配する侑に対して私が付いてるから大丈夫と言いつつも、7年前の因縁を示唆したのは何故だろう?もしかして、沙弥香も河川敷の侑と同じように橙子の本心に触れ拒絶されたことがあるのだろうか?
だから同じように橙子を心配する侑を牽制しつつも、7年前の事実を教えることで自分と同じように橙子に拒絶されればいいと考えたんだろうか?
だけど侑は沙弥香の想像を超えた答えを見出してしまう。

橙子が特別になりたいと努力していたのは亡くなった姉の代わりになるためと知った侑。これまでの触れ合いから特別であろうとする橙子よりも本来の橙子に惹かれ始めていた侑としては、橙子の為ではなく自分の為に亡き姉の後を追う橙子は止めたくなる
だから河川敷に到着してすぐに侑が投げかけた言葉は綺麗事じみている。そしてそんな綺麗事など言われなくても判っている橙子としては受け入れる余地はないどころか、心が離れる原因になる。だから、この時の二人の距離は離れるし侑の呼び方も「小糸さん」になる

本当の橙子を好きになりたいと近づいたら離れられてしまったのだから、侑が橙子の隣に居ようとするならば橙子の本心を刺激した上で橙子が求める歪な関係性を受け入れなければならない
ここにあるのは欺瞞だらけだ。侑は橙子を好きになりたいから、隣りに居たいから、好きにならないと宣言しなければならない
橙子は自分を特別視しない侑を求めるから侑を好きだとは言っても、「私を好きになって」とは言えない
最初に橙子が侑に抱いたのは恋心であったはずなのに、二人共あまりにも特殊な心持ちであったがために、隣に居続ける為に自分の心に嘘をつく破目になってしまった

前回までは二人が少しずつ明るい未来に向かって進んでいく予感をさせたのに今となっては僅かな灯りの中、暗闇を無理矢理歩いているようにしか思えない
一体この物語がどのような着地点に向かって進んでいるのか全く判らなくなったぞ……



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