描かれるは大喜と雛だけのデート模様。けど二人だけの場所では無いから知り合いと出会ってしまう。その際に二人だけの時間を取るか、他の人を混ぜてしまうか…
二人きりという要素を特別視しているかに左右されるその判断は残酷な程に雛と大喜の差異が見えてしまったような
それでも雛は二人の場所も時間も楽しんだと判る。雛にとってあのデートは思い出深いものになったのだろうね
約束して出会ったのが雛なら、偶然出会ったのが千夏
約束をしていない大喜と千夏が一緒に夏祭りを楽しむなんて普通は難しい。けれど迷子のゆめが二人を結びつけた為に祭風景を共にする事になった点は運命的
この際の千夏の態度が少し面白いね。2人を結びつけた幼いゆめにはお姉さんとして優しい対応。けれど場を乱すかもしれない花恋はちょい警戒気味
大喜は千夏との時間を終わらせたくなくて「可愛い」と言わなかったけど、千夏も二人の時間を止めたくなかったのだろうね
雛は大喜が千夏と出会っていた事を知らずに二人の時間を過ごしたわけだけど、一方で大喜は雛が誘われていた事を知らずに過ごした
これは雛が大喜との2人だけの時間も場所も崩したくないから、誘いを受けず且つそれを大喜に教えなかったのだろうね
それだけ雛はあの瞬間を楽しんでいたと受け取れるわけで。そうなってくると雛を待たせている間に千夏と逢ってしまった大喜の罪深さを意識せざるを得なくなるな……
罪という観点では、千夏は大喜の嘘を責めているね
実際は考え足らずな大喜にそのつもりはなかったのだけど、事情を知らなければ、そして考え過ぎな千夏としては納得し難い齟齬
けれど、それを大喜に聞かせるでもなく話すのは分別があるからか。大喜も千夏も雛も恋愛より部活に専心中。だから恋愛で心乱して部活をおざなりになんて出来ない
もやもやが有りつつ、告げられず部活へと戻っていく千夏の姿に彼女の立場から来る難しさや切なさを感じずには居られなかったよ…
闇になろうと己を壊した迅火を満たすものを問い直した時、ようやく彼はたまの傍へ帰れたように思えるとても良いエピソード
千夜は己に住まう闇や彼を大切に想う者達との繋がりにより己を満たして高みまで辿り着いた。それは千夜が人として在りたい姿の最終形。多くと共に在る者と確立された彼は千本妖狐と渡り合える
なら、そんな境地に辿り着いた千夜と渡り合う迅火は何により己を満たしたのかと改めて考えてしまう
迅火はたまと共に過ごせる闇になる為に人を捨てようとした。その果てに人どころか己を葬り捨てる羽目になった。それはどう見ても願いを成就した姿とは言えない。迅火の心象風景に描かれたようにそのような在り方は寂しいもの
だから迅火を迎えに行った真介達が彼に投げ掛けるべきは言葉ではなく温かさになるのかもしれない
どんな言葉を拳も拒絶の壁を通りはしない。でも、彼は自らの意志で温かみに向けて動き出す事は出来る
ならば彼と向き合えたたまが彼に授けるべきも、やはり温かみとなるのだろうね。
よくよく考えれば、たまが授ける温かみは迅火が闇を目指さなくても元より持ち合わせていたもの。加えて嫌いだった筈の人間の中で好きな人間も見出せた。それは紛れもなく彼を満たす温かさ
そうした極みとして愛へと回帰し、彼はようやくにして暗黒の世界から抜け出せたのだと思えたよ
最後の最後に大暴れした迅火の力、虚無という彼が迷い込んだ有り様を端的に表す力に対して、千夜が虚無を満たす選択をするのは良かった
多くと共に有る者として千夜が辿り着いた境地。今の千夜に満たせぬ器はないし、愛を知った迅火も同じように虚無を満たす在り方を備えていると判る
次回は遂に最終回。水上悟志作品の真髄は戦いが終わった後の日常風景にこそあると思っているだけに、それをどのように演出してくれるのか、とても楽しみですよ
友人帳始まりの物語と言える今回は幾つもの擦れ違いや臆病が含まれたものだったね…
人に混じれないレイコは一人の心地よさに浸っていたならば蒼子と居る心地よさは未知のもの。単純に友達になりたいとかそういう理由で彼女は蒼子と居られない
そこで必要とされたのが勝負か。レイコが勝負なんて遊びを通して求めた繋がりが彼女の想像しない形で妖を縛ったのに、彼女自身には何も返ってこなかったなんて皮肉な話…
蒼子は友達になりたいから思い切る為に勝負をする。レイコは友達になりたいか判らないから勝負に託す
幾度も言葉を交わしたのに伝わらない心模様は心が見えるソラノメが居ても伝わらない。何故なら彼は蒼子には見えないし、レイコの心は読めないから
三者三様に想いを伝えられない、伝えたくても伝わらない
でも想いが伝わらなくてもどかしくなるなんて、きっと誰もが通る経験
蒼子が石を当てた際だって、レイコがほんの少し勇気を出せば2人は友達になれたのかもしれない
そうならなかったのはレイコだけが妖が見える絶対的な違い。他の人に妖の事を伝えようとしても伝わらないし理解されない
彼女が妖から蒼子を守ったとしても伝わらず、レイコが蒼子を拒絶したようにしか見えない
それでもレイコが再度あの場所を訪れたのは微かにでも蒼子への期待が捨てきれなかったからかな…
でも、捨てきれない想いを持ち続けるのは苦しいから捨てなければならない。ソラノメを誘ったのはきっと期待を捨てる為の工程でもあって
人ではなく妖と原っぱを見た行為は彼女に人生の期待できなさを見たのかもしれない。そうして、まるで蒼子との遣り取りをなぞるかのように妖と勝負をし始めるレイコの人生には物哀しいものがあるね……
もう伝わらなくていいレイコが諦めた後でまだ伝えたいと粘った蒼子や2人の間をどうにか取り持ちたいと悩んだソラノメを思うと心苦しくなるが、 それが時を超えて少しだけでもレイコを知る夏目に届いたのだと思うとほんの少しだけ救われた気持ちになってしまう…
レイコが見せたいと思った原っぱは夏目も見れて、それはやっぱり大切な人に見せたいと思うものだったのだろうから
雪への想いに揺れる人好は先へ進む勇気が無いだけに留まらず、恋の定義や家族への執着等が雪との関係を変える事を恐れさせていたようで
人好と雪は全くの他人からもち太を含め家族っぽい関係になった。時には李恋が加わって家族的な賑やかさが増す場合も有る
それだけに人好と雪の2人に限った場合、自分達の関係をどう定義するか?という点は家族関係で満足できない想いを抱えるだけに特に人好を揺らがしてしまうようで
普通の家族間であれば、添い寝をしたり少し下着が透けた処で感情を取り乱したりはしない。つまり、人好が雪の様々な姿に動揺してしまうのはそれだけ彼女を特別視している証拠でも有って
でも、彼女とは家族的な関係も維持したい。そうしたチグハグな感情が雪への過剰な拒絶になってしまうのは仕方ないとして、それが雪の感情までバグらせてしまうとは驚き
彼女は彼女で人好との家族的な関係を心の拠り所としている
そもそも人好と雪の関係が揺らいでいるという話なのだから、2人で解決策を見つけるのも難しい。人好の家族である李恋でも同様
そこで雪の友人であるナカの出番となるわけだ
彼女も家族との関係において涙を流した経験があるが、今は流さずに済んでいる。彼女は涙溢れ症状の先輩と言えて、そんな前向きな言葉が身に沁みたから雪も改めて人好達と一緒に居たいと思い直せたのだろうね
そんなタイミングで現れるのは人好の実の家族であり、色々因縁がありそうな父親。彼は人好と雪の関係を見て何を言うのだろうね?
引き続き恋愛感情に惑わされる大喜の姿が描かれるね
千夏との間には変わらず線が引かれたまま。そうして曖昧な心境となった大喜を雛が見て心穏やかになれない為に今度は雛のターンになるとわけだ
ただ、大喜は未だ雛を恋愛対象として全く意識出来ていない。その意味では雛はまず大喜から異性だと意識される事から始めなければならない。大喜に想われる千夏に対抗する雛としては厳しいところだね
雛を意識する男子が居る点を認識しているように大喜は雛が女子であると知っている。でも2人の始まりはそうした要素をあまり意識させないものだね
大喜は堂々と林檎飴を欲しがる雛の姿に女子らしからぬ姿を見た。だから友達に渡すかのように林檎飴を渡せた。そうして始まった2人だから距離はとても近いものとなったんだろうけど、始まりに異性を意識させるものでなかった点は今になっても2人の関係を変えられない要因となっているような
だからって雛が頑張って誘ったのにデートと認識されないのは悲しいものがあるけれどね
でも大喜は第一印象が不変であるとは限らないと今回知れた筈
針生がライバル視する兵頭の存在は大喜とて同様に警戒する。でも彼は普通の先輩かのように大喜にアドバイスしたね
だから大喜は普通の先輩後輩のように、彼と努力目標について語り合えた
ならば、二人きりの花火大会デートは親友枠である雛への印象を変える機会と成り得るような
これは雛にとって正念場だし、大喜にとって雛との関係をどうしていくか選択を迫られるものとなりそうな予感…
無の民には救いの道が描かれた。それを成し遂げた千夜はけれど自身に救いがあると思っていなかったようで
救いが無いから放浪するしかない。悲壮な彼の覚悟は他方で彼に想いを寄せる月湖を無視するもの
この擦れ違いの根源に何があるのか。それを潜り探る話となったね
己を人の世に有ってはいけないと話す千夜は居場所が無いと言っているようなもの。同じく離れようとしたなうは居場所が有るから帰らなければならないのとは雲泥の差
でも、長い時間を共に過ごした月湖にとっては千夜の発言は許し難いし、真介も千夜の認識を正さねばと思う
ただ、千夜が救われるにはそれこそ自分で自身を救うしか無い
そうして幽界で明らかになるのは彼は自身を救いたいのではなく滅ぼしたいとの罪悪感。野禅の言葉が無くても彼は自分を人間として許すつもりなんて欠片もなかった訳だ
自分勝手な破滅願望、それを空気を読まない飛び蹴りで止めた月湖は良い女房ですよ。月湖にとっては千夜こそ共に在りたい者。月湖には千夜が居場所で、ならば千夜にとっても月湖は居場所となる
そうした認知の改善が、千夜を千の闇が埋め込まれた人間ではなく、多くと共に在る者と再定義するのは良かったな…
彼がどれだけ変わってしまったとしても、彼と共に在る者達は変わらない
多くを救い、己自身をも救った千夜が次に救うは自ら滅びに突き進んだ千本妖狐・迅火。灼岩も戻ってきたのだからいい加減に迅火・たま・真介・灼岩が揃ったシーンを見たいものですよ
儀式の邪魔をする妖は邪悪な存在ではなく、恩返し目的の臆病な妖だったようで
ただ、一つ目の妖が恩を返したい政清はもう何処にも居ない。そこにはままならなさを感じてしまうね
人と妖の違い、生きる時間の違い、そして住む人がいなくなっても変わらぬ家。そうした変わるものと変わらぬものが交わる世の中では人も妖もままならなさと折り合いを付けて行く事でしか生きていけないのかもしれないと考えてしまったよ
政清が家なんて無くなってしまえばいいと言ったのはきっと己の家を憎んでではなく、彼に纏わりつく三春という家のままならなさに苦しんでの発言ではないかと思えてしまう。彼自身は三春の家を滅ぼさなかったのだろうし
でも、そんな細かい感情は妖に通じない。一つ目の妖は単純な答えとして家を滅ぼせば良いなんて考えてしまう。もうそこに家人は居ないのに
もはや意味を持たない願いには虚しさを覚えてしまいそうになる。けれど、夏目は妖を見捨てなかったね
夏目も妖が見える者としてままならない人生を過ごしてきたが妖と関わる事を辞められない。その意味では彼はままならない人生と折り合えているのだろうと思える
だから一つ目の妖に、自由に生きられない政清が願った「自由」の尊さを改めて伝えたのだろうね
別の視点を持てば、飄々とした風に見える的場とてままならない家で生きる人物だし、琵琶と名取に纏わる思い出もちょっとした苦みがあるもの
そんな彼にとって滑稽で厄介な妖と生きる夏目が普通に過ごし続ける姿は羨望と安心を覚えるものではないか、なんて深読みしてしまう
名取すら稀と認識する夏目と妖の折り合い方。それだけに最後の夏目の台詞には強がりではない優しさに満ちた自由さを見出だせるのではないか思えてしまったよ
人好と雪が家族らしさを突き詰めようとするならばそれこそ家族になるしか無く、互いの恋愛感情はどうなっているのかと初期から気になっていたのだけど、今回はその点をフォーカスした話に
そんな折に人好へ届くのは実父からの通知。家族になれば何もかも温かい関係に成れるわけではないと示唆する表情はだからこそ雪に人好に元気になって貰いたいとの想いの源となったような
それは間接的に雪と人好が家族に近づいているのだとも感じさせるね
ただ、当の本人達は自身の恋愛感情を表に出さないね。雪は恋より家族という感じだし、人好は察して自分の感情に蓋をしている
だから家族らしい遣り取りをするのだけど、それだけに油断した際に飛び出す感情が2人をドギマギさせているね
また、2人を仲介する役割の李恋も良い動きをしている。彼女は第三者的ポジで2人の関係性を言い表してくれる。特に片想い診断はナイスプレー。これにより人好も雪も言葉にする形で相手を特別に想っていると自覚できるもの
炬燵での天誅は図らずもその点を強調する形に
炬燵に潜らせた脚で相手の脚を蹴るなんて家族ならではの悪戯。人好は李恋相手だったからそんな行為をしたのだけど、相手はまさかの雪
そして雪からすればそんな悪戯をされるのは心置きない相手と思われているようなもので
家族的な気安さからした行為が結果的に恋人間の秘密のサインみたくなったのは面白く感じられましたよ
折角の試験はまさかのトラブルによって未受験に終わりましたか。こんな展開予想できるかと思ってしまうけれど、学校全体に起こったトラブルは更に大規模で予想不可な代物
マ組は影響なくて普通科だけ生気を奪われる謎の症状。でも普通科でも平気な者が居たりとその基準は謎
これに古代魔法が絡むのならば、キョウが疑問に感じるようにこの異変は魔法そのもの正体にも繋がりそうな予感
魔法使いになれるかもしれない折角の機会でクルミとユズが人助けを優先したのは良かったな
最初はただ魔法使いになりたいだけだった二人は様々な夢が飛び交う普通科を経てどのような人間になりたいかを見定められた。だから人助けをしない魔法使いに魅力なんて感じないわけだ
誰かを助けたいなら、それは目の前の人だけじゃない。学校全体が対象
病症の根本原因、ひいては魔素の謎にも突っ込んでいく必要があるのだろうけど、そんなの何も知らない学生だけで判るわけがない
ここに来て裏から見守るばかりだったカイが関わり、ミナミを助け出したのはいよいよ状況が切迫してきたのだと感じられる
手帳魔法に頼れない事態、果たしてクルミは皆を助けられる魔法使いに成れるのだろうか?
千夏との接触は大喜に敗退のショックを忘れさせるけれど、代わりに彼女へのもやもやとした感情を残すものに
何かを期待せざるを得ない接触。けど実は何も無いかもしれない。あやふやな状況は大喜の目標が中途半端な状況になってしまった事も影響しているような
インターハイへは行けなかった。期末試験も終わり、夏休みに入る。そのような状況では恋から目を逸らすものなんて存在しない。だから大喜は千夏への恋愛感情に振り回されてしまう
一方で千夏の側も感情に振り回されている素振りが見えるのは面白いね
不意に接触した際は大喜を突き放すかのようにあっさり身を引いた。あれは傍から見ればラブコメのようなワンシーンと思えるだけにあそこから恋が始まる可能性まで頭に浮かんでしまう
でも千夏はシンプルで無いという。大喜の父が彼女の考え方を真面目と評したように、千夏はいつだって大喜の家に居候している事実を重く見ている。だから恋愛感情に揺らいでしまうを良しとしない
千夏があの件を忘れようと言い放ったのは彼女にとってあの家で過ごす中で大喜との過度な接触は不要だという話。きっと千夏にとって異性としての大喜は自分を惑わせるものなのかな…。彼女はバスケの為に猪股家に住む決意をしたわけだから
でもバドの大会が終わってしまった大喜は彼女と同じ心地で居られない。ここに来て大喜と千夏の目標地点の違いが強調されてくるね
恋愛感情に振り回される大喜と千夏、それを近くで見せつけられる雛
恋愛と部活動が複雑に織り成す物語はこれからどう展開して行くのだろうね?
対立する者達を集め目指すは円満会議。けれど、実は議論点など既に無い。無の民は手詰まりになったから未来に解決策を求めた程だし
特に無の民の少年は今更議論によって救国の策を見つけられると思えない。でも千夜を倒せないからひらめきに頼るしかない
そうも進退窮まる者達を前にすれば、千の思い付きを持つ千夜ですら何の答えも出せない。それ程までに彼らの問題は難しい
その意味では、会議の場で千夜に求められたのは解決策を見出す事ではなく彼らへの理解だったのかもしれない
未来に来てあらゆる命を使って国を救うなんて千夜には遠い話で理解出来ないけれど、猛が例に出したように自分が過ごした村の為ならという話は理解できる
そこでようやく彼らも救われて然るべき存在と判るわけだ
解決策そのものは、八卦猫が簡単に見出したね。
けれどその策は乱暴なんてものではない。滅びを避ける為に別の滅びを取る、全てを救えない策を救済と納得できない少年が去ったのも納得できる話。残った2人が納得したのは己達が命を懸けてここまで来たからか。全ての命は救えなくても救える命はある、それが救済であると判る
救われるべき者の為に命をなげうつ彼らに千夜が掛けたせめてもの慰めが彼らの希望になればと願ってしまうね
戦いが終わった者達は逃げ出したり師匠に報告したり。それも一種の円満か
特に人間を見下していたムドが道錬の亡骸に向かって感謝し涙を流す様は胸を打つね。彼も長い旅の間に己が命を懸ける在り方を手にしたようで
そして、千夜は自分なりの納得として去ろうとしたのだろうけど、それを許さず地面に打ち付ける真介容赦ない…(笑)
千夜とて無の民と同じように救済を求め彷徨う者。そんな彼の旅を終わらせる為に真介達はどんな言葉を投げ掛けるのかな?
本来の家主が去った侘しい家屋で行われるのは異形を迎え入れる儀式ですか
本作では人と妖の様々な距離感を描いてきたけど、厄介だと感じつつも人が妖を迎え入れようとするとはちょっと珍しい傾向のEPかもしれない
でも三柱様の始末を的場が考えているように、別に人と三柱様は良好な関係ではない。それでも迎えなければ災いが訪れるから迎え入れる
名取が懸念するように異形との約束の危うさを面白い形で描く事になりそうな
ただ、三柱様を迎え入れるだけでは的場が場を支配して終わる。けれど、的場が把握していない邪魔者が登場する事で場の支配者が不明瞭となるね
そもそも夏目と名取はあの家に紛れ込んでしまっただけで本来は儀式に協力する義務なんてない。けれど、邪魔者の行為に巻き込まれた事で夏目達はあの屋敷に迷い込む事になったと言える。また、儀式を進ませまいと的場と名取を閉じ込めるなんて事もしている
その意味ではあの家で起きる事柄を支配しているのは謎の邪魔者とも言えるのかな
けれど、夏目は巻き込まれながらもあの屋敷に留まると選択し、更には的場が言う始末も批判的な立場を崩さなかった
他者の支配を受け容れず、自分で判断する考えを持ち続けていると見る事も出来るのかな?
そんな夏目が邪魔者らしき存在と接触した。これは三柱様を迎え入れる儀式を進める上でどのような事態を展開させる事になるのかな?
只者ではないと思わせていた日陰兄妹が別の意味で只者じゃなかった…。というか、武のキャラがかなり濃い……
けれど、妹のナカについてはこの回で結構深堀りされた印象。正体を隠して学校に通う雪に突如近づいてきた上がり症のナカとて正体の見えないタイプ
けれど、雪と友達になりたいとの想いは真摯で
彼女の想いを探る事が雪自身の想いを探る工程へと繋がっていたように思えますよ
雪と仲良くなりたくて、友達になりたくて役に立とうとするナカ。けれど肝心の雪は友達の意味を知らず…
だから雪はナカがどういう人間かを知りつつ、同時に彼女が言う友達の意味も探る事になるわけだ
その過程では人好が言う友達の定義、ナカが身を持って示した友達の為に奮闘する姿は雪の感性を刺激するね
……ただ、武との対決中に勝田ソースへの食欲に負けているのは本当にどうかと思うけど(笑)
家族を喪失した雪にとって横谷家は新しい家族。だから特別を欲した
その意味では家族でないナカに対し特別を求めた今回の雪は人の繋がりを大きく広げる一歩を踏み出したと言えるのかな
また、ケイドロ等における雪のテンパリ具合から、彼女が文化祭という特別な瞬間を楽しんでいたと判るのは良いね
ナカという友達を欲した。文化祭をもっと味わいたいと思った。そうした感情がこれからを彼女に意識させるものとなる、そんな温かさを感じられるEPでしたよ
再起のチャンスはクルミだけじゃなくユズにも与えられたのか
マ組だけを目指していた頃と違い2人には選択肢がある。マ組に挑戦しても普通科に留まっても良い。クラス落ちしたと嘆いていたアニクが普通科で夢を見つけられたように普通科にはマ組にない良さがある
だからこそ二人は簡単に選べない
そう考えるとどれか一つに絞るのでなく全部やると決めたクラス出し物は象徴的
欲張りな考え方だけど、そう決めた事で全部をそのまま出来なくても環状線ピタゴラ焼きそばなんて独自性高い出し物を編み出せた
ならクルミ達も絞るのでなく欲張っても良いかもしれない
マ組に行くと決めるのではなく、思い切って挑戦する。それが再試だったというだけ
クルミとユズは楽しそうだけど、一生懸命再試に向き合っていると伺えるね
ただ、その裏では随分きな臭い陰謀が蠢いているようで…
そろそろ物語も大きく動いてほしいところだけど
敗退のショックを抱える大喜だけれど、日々は彼の為に待ってはくれない。期末試験はあるし練習は続く。それどころか次へ向かう目標を書けだなんて言われる
表面上は現状を受け入れているかに見える大喜も独りの時には別の顔を見せる。特に千夏との差を感じた時は顕著
そんな折に体調を崩したのは流れる時間への反抗心を反映したのかのように感じられたよ
独りだと何処までも落ちていく鬱屈した想い。それに反抗してくれるのは千夏との思い出であり、何よりも本物の千夏が落ち込む大喜の心を引き上げてくれる
普段の大喜はポジティブ傾向が強いけど、大喜が弱ったとき代わりにポジティブに考えてくれる千夏の存在は大喜にとってとても有り難いものだね
でも、千夏と接したからって突然ポジティブに成れるわけじゃないから少しずつ物事の捉え方を変える必要がある
大喜はまだ試合前の約束を果たす気分に成れない。代わりに千夏が話すのは自分が落ち込んだ時の心境、掲げられた遠くの目標への想い
試合前の感覚に引き戻してくれるかのような千夏の「応援するよ」は大喜に苦さも辛さも飲み込ませるきっかけとなるね。控えめな目標になった張り紙を書き直す心構えへと舞い戻れる
と、前に進めそうになった処でふらついた脚が齎した驚きの接触。言葉を発せられない雰囲気で千夏が大喜へと伸ばした指にはどのような想いが籠められているのだろうかとドキドキさせられますよ
強大な力を持つ万象王に対して闇達が助力した事で局面は変わるけど、全てを救うと息巻く千夜には守るものが増えた形
自然と気は散ってしまうから、千夜は守る為の新たな力が必要となる。それがかつて自分を守ってくれた者達から命を頂く選択へと繋がるなんてね…
神雲と道錬は放っておいてもいずれ倒れてしまう。なら、消えゆく命をどう使うかという話になる
野禅が示した選択肢は選べるようで居て選べない代物。それは発想を狭めるものだね
他方で狭まった選択ばかり進めば心は決まる。千夜は飛ぶように戦場へ戻り迷いない心で万象王と向き合うし、師の死を知ったムドも選択の先で己が何をすべきかを定められる
覚悟が決まった2人による超威力の連打は圧巻
巫山戯た言動の猛が幽界で示すのは逆に選択肢を広げる発想かな
茶は毒か嘘か、無の民を救うべきか否か、己は何の為に生きるべきか
他者の調子を狂わす猛の言動はだからこそ定め固めてしまった選択肢を拡充するもの
要は全て自分で決められる、変えられる。己が内の闇に助けられようやく得られた千夜達の発想力は素晴らしいね。また、その至った境地がかつて千夜が願った戦いを遊びに変える道へと繋がったのが何よりも良い
こちらを圧倒し追い詰める無の民という構図は変えられた
ならば次は猛が言うように、無の民すらも救う選択肢へと至る全ての局面を変える話し合いとなるのだろうか
見ている最中は「西村、早く気づいてくれ〜」なんて気分になってしまったものだけど、終わってみれば彼は気付かない、または気にしないからこそ良い奴なのだと認識を改められたよ
相手の正体に関わらず平等に接し魅力を見出してくれる西村。そんな彼が夏目や人形から大事に思われる事に納得できるEPでしたよ
これまでに様々な妖を見てきた視聴者には一瞬で判る夜の夏目の怪しさ
西村が夜の夏目を怪しまないのは妖の存在を知らないのも有るだろうけど、そもそも夏目を疑うという発想を持っていなさそう
ある意味純粋に夏目を見ているから、夜の夏目相手でも普段と同じように友達感覚で接する。だから夜の夏目からも魅力を発見できる
一方で感覚的には夜と昼の夏目を別人と判断している節も有るのは面白い
夜の夏目相手にもう一度友達になった気分を味わうし、昼の夏目を久し振りに見た気がするなんて言ってしまう
その状態は精神の混乱を示しているようなもの。夏目は当然助けてやりたいが、昼の西村しか知らない夏目はすぐに何とか出来るわけではない
夏目も夜の空間へ入っていく必要があるわけだ
夜の夏目に連れられて夜、つまりは妖の世界に迷い込んでしまった西村だけど本格的に妖と接せずに済んだのは人形も彼の善性に毒気を抜かれていたからだろうか?
同様に夏目も西村の善性を尊んでいるから下手に妖について話して彼に見える世界を変えたりしたくないのだろうな
妖を知らないままに夏目の友人となってくれた西村の貴重さな存在感を改めて感じられたよ
ソース溢してONになるトラウマスイッチとか珍し……
さておき、今の雪にとって勝田ソースの充足は心の安寧に関わる重大事項。また人好との同居も好影響を齎している
そんな彼女が気にするは生き別れの妹の消息。けれど単純に再会し再び暮らしたいとまで思えていない点には彼女の安息の難しさが現れているね
前々回の夢や初期の荒れた家、今回の父親語りに現れるように人好にとって家族関係は難しい問題。それが問題でない状態になったのは雪との同棲が始まってから
同様に雪も人好と暮らし、勝田ソースと出会い安心ある生活を手に入れた
でも彼女はそういった暮らしが突如奪われる恐怖を知る人間だったのか…
変哲もない生活が自分を原因として突如崩壊するなんて人格が保てないトラウマ。その上、支えにしていた妹から嫌われたと成れば寄る辺すら失ってしまう
彼女に残された唯一の存在理由が暗殺で、だから暗殺が絡まない今の生活は薄氷の上に成り立つようなもの
不安感に満ちた彼女に親が与える愛情のように温もりを与えてくれる人好はやはり雪にとって貴重な存在と判るね
1年には勝ち目がない勝田祭、けれど雪の精神内定剤である勝田ソースが絡むなら話は別。グレイスが取引材料として使えると考えるくらいには雪にとって勝田ソースは無くてはならない存在
それだけに雪を窮地から助けた上で勝利の策を授けようとするナカは何の得があるのだろうと気になってくるが…
諦めていても授業が始まらなくても日々を楽しむ気持ちは変わらない
少々ファッションなる言葉が便利使いされすぎているようにも思うが、それによりクルミ達はあらゆるものを閉じ込める雪中でも楽しめた
ただ、雪を拓いた事で別のものも顔を出したようで
居残り組は随分仲良くなったね。アニクの感情は変わらず怪しいものの、クラス落ちしたと嘆いていた頃の影は見られない
同様にクルミとユズは初期の距離感は何処へやら随分と仲良くなった
二人は充分に意思疎通できるようになっている。だから難題にも二人で立ち向かえる
手帳魔法で対処できない魔素には古代魔法の出番。けれど夢を諦めようとするクルミはユズに押し付け
でもユズだって自信があるわけじゃない。だからこそ二人で立ち上がる必要がある
クルミの諦めをよそに成功した古代魔法、更にマ組に上がれるかもしれないチャンスはクルミの夢を切り拓くものとなるのだろうか?
勝負の結果は複合的なものだから勝ち負けの理由を明確に求められるものではない
ただ、勝者と敗者という差は有るのだから何か違いはある。その違いとは何なのか?針生と兵頭の違いは単純な実力差かもしれない。でも大喜と遊佐の違いは何なのか?
簡単に説明できない理由を探るかのような回に思えたよ
同じくインターハイを目指す大喜と千夏は似た朝となる。そこに違いが有るとすれば大喜は千夏の言動を気にしていて、千夏は大喜を応援する気持ちがあった点
でもそんなの些細な筈だから勝敗の理由にはならない。でも勝利を求める集中力は違ったかもしれない
前回、針生との試合感触が良かった事で大喜は高い目標により現実味を感じるようになった
兵頭ペアへの試合は観衆に驚きを齎すものに。針生ですら勝ちを拾えない相手から注目を向けられる程の反撃を示した。ただ、大喜は兵頭からの注目に気付かないね
厳しい言い方をすれば大喜は視野が狭まっている
対して千夏は大喜への声掛けをしっかり考え、彼の決意文言の横に自分も書き加える視野の広さが有る。これは大喜の力となっているね
大喜の視野の狭まりが際立つのはトーナメント表を見た際に針生との試合に自信を示すシーン。気持ちの良いそれは逆に兵頭や針生以外の選手を軽んじているとも言える
だから遊佐相手に取り零したのは必定、大喜は高い目標ばかりを見ていた為に自分が誰と向き合っていたかを見れていなかった。それは大会中に他所の選手に親切を示す行動にも間接的に現れている
ただ、今回は敗北に繋がっただけで大喜の心構えそのものは良い筈なんだよね。同じ競技者である針生や雛から好印象を持たれるのは当然
だから大喜も成長すれば遊佐のように来年には注目選手になるかもしれない。けれど、千夏は今を戦っている
大事な成果をしっかり掴んだ千夏を見て逃げ出した大喜。このような悔しさを乗り越えてこそ勝ちを拾える選手と成れるのだろうね
道錬と神雲の絆が描かれた後の今回にて問われたのは己の在り方か
幽界干渉で千夜は己の強さをぶつける事で闇を無の民から解放してきた。けど真介の遣り方は別、相手に寄り添い弱さを肯定している
思えば、神雲が解放されたのも道錬に負け己の弱さを認めたからとも解釈できる。必要なのは相手に勝つ強さではなく己を許す強さと言えるのかもしれない
ムドが道錬に教わった技に頼って昔の己のに苦戦するのは似たような話かも
道錬に師事する事でムドは技を使えるようになった。それは己の弱さに抗うような行為だったのかもしれない。だからこそ、成長した今は昔の己に圧されてしまう
ならば苛立ちから力頼みになったのは原点回帰。それはまるで昔の在り方を許し、今の在り方に弱かった己を取り入れたかのよう
千夜は月湖を侮っていた己の間違いを認めたけれど、その上で万象王との勝負に月湖を連れて行かない。それは万象王に対する己の弱さを認めているとも、月湖の強さを正しく計ったからとも取れる
どちらにせよ月湖がどれだけ頑張っても昔のように千夜と肩を並べらない。月湖は強者に到った千夜を前に弱い己を認めるしか無い。まるで別離かのよう…
操られていないのに戦う万象王の動機が昔の千夜とムドにあるなんてね
空の頂に座し何者にも干渉されなかった筈の存在が影響を受けた激闘の興奮。それは万象王が己の不足を認めた証か
そんな相手を倒すにはより強い力をぶつけるしか無いが…
強さばかりを求める戦場へ強さを持たない闇達が加わるのは戦局をどう変えるのかな?
2人だけの秘密として祖父と兄から始まったものが、時を超えて兄と妹のものになった構図が心温まる情景となっているね
秘密は隠されているから知らない者にはちんぷんかんぷん。勇の存在を知らなかった学友達には彼氏に見えたように
大切な人が持つ秘密をどうやって知るのか、明かすのかという点が優しさを伴って描かれていたように思えるよ
多軌にとって帰ってきた勇は秘密の塊。外食の理由も散歩の理由も判らない。おまけに相性が良くないと思っているから突っ込んで聞く事も出来ない
ここで多軌が夏目を頼る展開は良いね。夏目と多軌は妖が見える秘密を共有してる為か別の秘密へ迫る多岐の相方は夏目となる
そして多軌が夏目を「大事な友人」と言ったから勇も信頼のきっかけを得る
勇は2つの秘密を持っていたタイプかな
でも彼は体調と縁起石どちらの正体も知らないから多軌に明かせない。けど多岐に隠し事をしたいわけじゃないから、別の事情として鍵穴を教えて一緒に探し始める
この行動からは勇が多岐を大事に想っている事が見えてくる。だから秘密の正体が家族想いの証である点にすんなり納得できる
最初は祖父と兄だけの秘密。だから祖父との接触が減り、無くなれば秘密は継続できない。そこへ妹を想う気持ちが改めて伝わる事で思い遣りが籠もった秘密も蘇る構図は良いね
また、そのような秘密の遣り取りを通して、勇から夏目へと新たな秘密が言い渡されるのは茶目っ気溢れる可愛さを感じてしまったよ
これまでが精神面で雪の普通を目指すEPだったなら、今回は見た目や好みでの普通を探る話と成ったのかな
家や街に溶け込み過ごす雪の日常は普通そのもの。でもやはりメイド服を着こなした女性なんて普通はお目にかけない訳で
なら雪は普通で無いのか?という点を描いていたね
李恋やグレイスが最初に選んだ服はアレだったけど、以降の服はお似合い
けれど既製品の服って上手く選ばないと個性は出ず無個性と成ってしまう。普通の服を似合うからと着ても、そこに雪らしさはない
だからか、彼女にとって最大の自分らしさであるナイフはどんな服でも手放せない
ゾンビに怯える雪は可愛らしいけど、ここにも暗殺者ならではが現れるね
映画は暗殺に格好の場、ゾンビは殺しても死なないから怖い。その感性は普通でないけれど、一方で雪らしさに溢れている
となれば、雪が目指すは無個性な普通さではなく、雪らしい普通さと言えるのかもしれない
雪が明かすメイド服の来歴には彼女の想いや人生が詰まっているね。もち太のタオルも同様。そこにアイデンティティが在る
ならメイド服を普通でないと定義するのでなく、雪が好むメイド服を着る普通の女の子を目指せば良い
暗殺者だけどメイドだけど普通を目指す雪の理想が見えた気がしたよ