子供と大人の境界線の向こう側で陽菜がどのような生活をしているのかが垣間見えてくる序盤。4時間も立呑したり、お笑いライブに行って満喫したり、それでいて生徒の相談も聞いていたり。これらは大人ならではの余暇の過ごし方であるように見える
だからこそ、夏生にはしっかりと「大人」をしている陽菜が不倫をしているのが理解できない
喫茶店で鉢合わせてしまったシーン。夏生は自分の持っている情報だけで判断し柊に掴みかかる。しかし、それでは相手を理解した上で反対する道には繋がらない
だから、四人はテーブルに付き同じメニューを食べることになるのだけど、誰も食事を進めない。同じテーブルに着いているように見えても想いの共有はできず、間に分厚い境界線が引かれ続けたまま話は進んでいく
この構図は一方が不倫カップル、もう一方が不倫されている女性の家族となるのだけど、夏生はただ家族という枠組みに収まることが出来ない。柊の人間性を多少知っても彼の考えを受け止めることが出来ないし、テーブルの向こう側で繰り広げられる恋人のような遣り取りに焦燥を抱く。ここで夏生は陽菜の弟という立場ではなく陽菜に想いを寄せる男として柊に反感する
だから、ここで夏生が柊に暴力を奮っていたらそれは「男」としての暴力であり、瑠衣が行った「家族」の立場としての水掛けには敵わなかっただろうね
後のシーンで行われる柊と陽菜の遣り取りはちょっと凄まじい。
柊は夏生の話を出す。夏生が自分たちに反対するのは陽菜が好きだからだと説く。それに対して陽菜は大事な家族が悲しんでいるのを見て距離を起きたいと話す。微妙に論点がずれている
ここで柊がした行為は卑怯なもの。陽菜を抱きしめ「女」として扱いつつ、君はどうしたいのかと家族の問題ではなく個人の問題だとすり替えようとする
もし、先の喫茶店のシーンで先に動いていたのが夏生だったらこの時の陽菜の選択は変わっていたのかも知れないね
ラスト、陽菜と瑠衣の二人は夏夫の墓参りに混ざる。元は橘家の人間である二人は藤井母の墓前へ参る必要はない。けれど、この三人が家族であるなら話は変わってくる
どこか線が引かれたままだったあの家の住人がようやく家族になれた瞬間であるように思えた
ただ、不安なのは本当に陽菜は不倫を辞められるのかという点。ああいうものは一回始めるとずるずる続いてしまうイメージがあるけれど……