ディーヴァは自身の使命を拡張する事でAIが人類を滅ぼす未来を阻止している。使命は絶対的なものではなくて、その使命の意味を広く取ることでAIはある程度行動の自由を得られる
そういったヴィヴィの前例があるからこそ、使命を強制的に書き換えられたグレイスの悲劇性が際立ってくるね
前回見た際はグレイスが冴木と結婚したのは使命に則ったからだと思っていただけに、「誰でも良いというわけではありませんよ」との言葉にはハッとさせられた
グレイスは自分の使命に準じながらも、使命だけに縛られず心で冴木を選んだわけだね。そこにはグレイスの自由意志が有った
けれど、グレイスはAIだから冴木だけに奉仕する事を人類は許してはくれない
ここで冴木がグレイスの運命を受け入れられないのは様々な意味で興味深い
想い人が不遇の立場にいる事を人間的な認識で哀れに思い抗っているように見えるし、グレイスは以前の使命を忘れられずに居るなどとAIにとって使命が絶対的であるという機械的な認識も見える
また、グレイスの似姿をヴィヴィへの攻撃に用いた様子からも彼の中でグレイスを人間と変わりない相手として扱うか、機械として扱うか非常に曖昧であった事も見えてくるね
人間と変わりない姿に見えるAIも使命に縛られていない時は人間との差なんて殆どない。母代わりの温もりだって与えられるし、歌だって歌える
でもそれは時として中身のないモノに意味を見出してしまう事にも繋がる。それこそ音階データを歌と錯覚してしまうくらいに
でも、あの歌を否定してしまったらそれこそディーヴァの使命も否定してしまう
だから歌の使命を持つディーヴァではなく、AIを滅ぼす使命を持つヴィヴィと名乗り換えた。それによってヴィヴィはメタルフロートを止められたけど、同時に人を幸せにする使命も失ってしまう
AIを壊し人間を死なせたヴィヴィ。2つの血に染まった彼女の手は相反し崩壊した使命の象徴のように見えてしまうね