様々な手法で異種の共存を描いてきた本作、最終回は夏祭りの後に花見を描くという大胆な手法に出ましたか!
普通はその順番で共存出来ないイベント。けれど、それが当たり前のように成立している日常風景こそ、本作が最も大切にしている部分なのかもしれないね
前回の重さをまだ残したままの小林
彼女が知ったのはトールが傷つき救われた物語。それを意識したままでは相手との関係が気不味くなる
だからこそ、小林には心も関係性も日常に揺り戻す何かしらが必要だったわけだ
そこへ当のトールが夏祭りの準備を手伝っていたのは印象深い描写
本来はトールこそ異種を象徴するドラゴンだけど、街の人と準備をして本番でも屋台を営む姿は夏祭りの風景によく馴染んでいる
小林をきっかけに街や人に馴染んだトールが日常の象徴へと変化したと言えるのかもしれない
だからトールが手伝う祭は人を楽しませるものになり、ドラゴンも受け入れられる場所になる
でも、小林を一番癒やしてくれるのはトール本人だし、トールも小林の存在に癒やされている。
互いが互いを必要としているから重い話が出来るけど、二人の時間にそればっかりは味気ない。
胸の内を明かし合って2人の中にあった重くてザワザワするものが、しっかりした質量有る愛情と笑顔に変わる様は素晴らしいね
花見も日常を象徴するシーンだけど、花は肉片だし集う面々も異世界寄りの者ばかりで本当は非日常の場。けれど、そうした異種だと感じさせない振る舞いばかりで人とドラゴンを分ける境界など見えない日常の風景が広がっている
まあ、流石に腕相撲を人とドラゴンが競うのは無理があったようだけど(笑)
明日の仕事も重い過去も、そして種族の違いも気にならなくなる花見酒。それを言葉にしてくれる小林。だからトールも小林の傍に居たがるし結婚まで求めてしまう
ただ、それはやり過ぎだし恥ずかしい。逃げてしまうけど、逃げたいわけじゃないから追いかけられると嬉しい
祭では人とドラゴンの境なしに食べて遊んで並んで花火を見上げていた
花見でも人とドラゴンの境なしに食べて遊んで一緒に腕相撲をした
人とドラゴンの違いはたくさんあるけれど、違わない部分もちゃんと有る。本作では様々な手法でそれを描いてきたから、共に在る風景も違和感なく描かれている
最後はよく判らないままに皆で走る。そんな日常がとても尊いと感じられる作品だったね