酒の酩酊感は気持ち良さを齎すものの、酒量も過ぎれば気持ちの良さを通り越して気持ちだけでなく心まで酔いの底へ引き摺り込んでしまうもの
仕事への真っ直ぐな取り組み方を評価されて番頭まで引き立てられただろう善二まであの醜態を晒してしまう酒を良い物と持ち上げる事は難しい
ある程度の危険性を感じ取れるのに酒という身近な物である為に人々の生活に平然と潜り込む。そうしたお酒を主題とした今度の異変は厄介度が高そうだ
話の筋としては酒が人の心を曇らせるというものだけれど、他にも曇りを齎すものは存在しているね
甚夜は鬼を斬り過ぎた事で心の曇りを気にする。善二は無様な振る舞いを反省して表情を曇らせる。また、矢鱈と降りしきる雪は空を曇らせるもの
他方で晴れを齎すものは確かに存在しているね。善二を祝う席は笑顔に溢れているし、善二の曇りなき心を信じる奈津の言葉はいずれ善二に晴れを齎すだろうと感じられる
今は曇りが多くてもいずれ晴れが人の心に満ちると思える作りになっているね
気になるのは「ゆきのなごり」に対する味の感想が各人で異なる点か
善二や直次は不快感を催す程なのに甚夜は味が薄いと感じる程度。その反面、極上の味と持て囃す者も居る。味の感じ方にその後の症状が関連しているかというとそうでも無さそうだし。そして最も気に掛かるのは重蔵があの酒を愛飲している点
黒船来航により世は乱れ人の心も乱れている。そんな時期にあの鬼らしき存在の再登場を予感させるカット含め不吉な事が起きてしまいそうな予感にこちらの心まで曇ってしまいますよ