温和な人であった重蔵が鬼へと染め上げてしまう描写はあまりに心痛むもの
けれど、どんなに染まったとしても染まらぬ前を信じてしまう事もあるもので
前回、隣家の娘は父がどれだけ乱暴に成っても鬼へと変じても父に殺される寸前まで傍に居た。同様に奈津も眼の前で鬼へと変わり果てる父を見た筈なのに、甚夜に殺さぬよう懇願していた
また、甚夜とて鬼を討つ者へと自身を染め上げたのに相手が父となれば躊躇う弱さを捨てきれていなかった
それらを思うと、どれほど一つの色に染め上げたとて、他の色が消え去る訳では無いと示唆するような話と感じられたよ
鬼へと変わり果て討たれた重蔵、鬼へと変じた甚夜を罵倒した奈津
どちらの姿も甚夜にとって喪失であり、父と飲み交わした瞬間も奈津と語らった時間も大量の雪に埋もれてしまったかのように、何処にも見えなくなってしまった
けれど、どれだけ後悔したとしても甚夜は己を鬼を討つ鬼へと染め上げてしまったから奈津は癒せない。鬼を生み出す元凶を討つ変わらぬ行動をするしかない
それだけに甚夜が他に選びようのない行動を選んだ果てに待っていたのが変わらぬ愛情であったのは唯一の救いであったように感じられたよ…
鬼を生み出す泉へと利用された白雪は鈴音によって染め上げられた存在。けれど、全てを失わず甚夜を信じる心を残し続けていた。彼女がそうして待っていてくれたから、甚夜も鬼退治屋へと染めていた自身の中から巫女守という己を見つけ出せた
それはまるで深い雪の中から春の芽吹きを見つけるような行いだったのかもしれない
時は流れ続け人は変じ続ける。その中で年を経ない甚夜は変わらぬようで居て変わる部分もある。そうした繊細な変化を尊く感じられるような締めのエピソードに思えましたよ