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とても良い

人と妖怪による恋愛譚、結婚式への招待状、それがいつ投函されたか判らないと不吉なフラグを幾つも立てていたのに最後はめでたしめでたしになる展開は本当に見事

香に会いたいけれど、離れなければもっと悲しい想いをしてしまうという葵の心理が非常に丁寧に描写されていた。
会ったばかりの夏目を利用して学校に連れてきてもらったのに、いざ校門まで来て「俺はアホか何やってんだ」と自問したり、「あんな手紙如きで動揺して」と言い放ち、残してはいけないと手紙を焼けば膝を抱えて顔を埋める。
理性では人間と妖怪なんだからと判っていても、香の泣き顔を見てしまった最後には「だから嫌なんだ」と言いつつ香を抱き返した行為からは理性で抑えきれない心からの感情が伝わってきた。あそこで香に発した言葉は葵自身にも当てはまるものなんだろうね

一方の香は描写されていない部分があるのが少し気になるところ。葵を遊びに誘った際に飴で釣ろうとしたのは、香の友人関係は既に危うくなっていてそこまでしないと新しい友達が出来ないと思い込んでしまうような状態だっということ?
だとすれば葵は自分と関わり続けるために、香の友人との関係性が危うくなると心配していたけど、当時の香にとっては葵との関係が全てだったということだろうか?
夏目のこれまでを思い返せば妖怪が見える人が普通の暮らしをしていくのが難しいことは当たり前か。そういえば塾でも一人で食事していたっけ。
だとすれば葵と会った際に「あたし妖怪が見える力があって本当に良かった」と言い、それからも葵と関わり続けたのも葵との関係性がそれだけ大切だっということかもしれない

葵の「人の作る物の味を覚えると面倒です」に対してニャンコ先生が「私は面白可笑しく暇つぶしを楽しんでいるのだ」と返した流れは印象的。どちらも人間の傍に居続けることを選んだ者であるだけに、そこに含まれた意味はとても暖かく感じる



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