風子の「風」は風化の「風」だ。
風子の話は「記憶の風化」という現実では緩やかに進行する現象をキャラクターとSFを媒介にして劇的に、凝縮して描いている。
非現実的な物語であり、寓話や隠喩として眺めたとしても、決して人生を描いているとはいえない。人生はこんなにハートフルではない。
にもかかわらず、「これは人生だ」と思わせるようなリアリティと厚みがある。
「風子をおいて、私一人だけが幸せになるなんて。」
「でも僕は、確かめなくちゃ気が済まない。」
麻枝の創造するキャラクターは人間の執着、信仰、あるいは非合理性の具象化であるように思われる。
このようなキャラクター造形がこの厚みを生じさせているのだろうか。
いずれにせよ、キャラクターSFの可能性を感じずにはいられない。続きが楽しみだ。