※ネタバレを含みます。
『ちいかわ』の本編はほぼ未見で、「ほのぼのした作品」というイメージしかありませんでした。しかし今作は、その印象を覆す重厚なダークファンタジーでした。
物語の根底にあるのは、「大切な人とずっと一緒にいたい」という愛や執着ゆえに犯された禁忌(人魚を食す罪)です。復讐に燃えるセイレーンもまた被害者であり、ここには「絶対的な悪」が存在しません。互いの正義とエゴがぶつかる逃げ場のない悲劇の中、セイレーンの「犯人の尻には証がある」という言葉に翻弄され、ついキャラクターの尻ばかり気にして見てしまったのも悔しくも巧みな演出でした。
そんな連鎖の果てに、ちいかわは残酷な真相に辿り着きます。
しかし彼は、それを暴くことも裁くこともせず、
「真実を知りながらも、静かに胸に抱えて生きていく」
という道を選びます。言葉少なに葛藤を呑み込む佇まいは、彼が「世界の割り切れなさ」を知って大人になった証のように映りました。
劇中の「炭酸」と「単三」をかけたユーモアで和ませつつも、エンドロール後に突きつけられる後味の悪さは最高です。
「何かを得れば何かを失う」という残酷なリアリティと秘密を背負う切なさ。初見の私をも一瞬で引き込む名作でした。