新しい友達、知らない場所。ないない女子だった子熊の静かな世界が、カブとの出会いをきっかけに少しずつ拡がり躍動してゆく様子が丹念に描かれた回でした。新しい出会いに戸惑いながらもその喜びを噛み締める子熊の姿がとても可愛らしくこちらまで心がじんわり温かくなります。
子熊は基本的に表情の変化が控えめなのですけど、その分ちょっとした仕草や振舞いを丹念に描写していて、別れ際にカブをポンポンと叩いたり、意を決したようにリュックの肩紐を掴んだりと、全体の姿を使って丁寧に心情を表現しているのがまるで実写映画を見ているような感じで好きです。
それと本作品は笑顔がすごくイイ。妄想した後の子熊のはにかむ顔やバイクを見せる礼子のキラキラした表情、一緒にお昼を過ごす二人の白い歯を覗かせる笑顔。表情の変化が控えめな分笑顔がより引き立つのもあって、嬉しいのがぱっと実感として伝わってきてこちらも頬が緩んでしまいます。
あと、改めて音響と劇伴はホント素晴らしい。エンジン音の臨場感にはゾクゾクしたし、劇伴は作品にそっと寄り添うような曲が選ばれていて拘りを感じます。優しく繊細な曲調はそのままに今回は子熊の変化に呼応するようにやや明るめで賑やかに躍動感のある曲調になったのが印象的でした。
夏の日差しと影のコントラスト、夕暮れ時のオレンジに染まった空、と印象的な背景美術。アテナとアリスの二人には黄昏時が似合う。
ダイナゼノンを中心に5人が関わり始める様が描かれた回。特に夢芽の人となりが印象に残りました。普段はわりと冷めた感じなのだけど親友の前ではとっても無邪気。出会い頭で怒られたガウマに反発するかと思いきや、意外にも訓練に出たり素直に指示に従ったりと、とても従順。一方で、今まで相手にキレられてもすっぽかし行為を繰り返していたのに、蓬には謝ったのも印象的です。蓬が怒らなかったから?蔑ろにされている感じの両親に、アンビバレントな感情を抱えていそうなお姉さんの存在。夢芽さんまだまだ掴み所のない女の子という感じで気になりますね。
また、金太郎娘は主要メンバーで唯一ダイナゼノンに搭乗しないですけど、どういう立ち位置に収まるのか気になるところ。後から追加パーツが登場したりするんだろうか、もしく将来誰かの後釜に…と少々不吉な想像も頭をよぎったり。
あと、突然風呂場に入ってきた、素っ裸のガウマの局部が障害物(水道の蛇口)で隠れてる絵、エヴァの日常シーン思い出す。GAINAXの伝統かしら。
ケイトとエミリコ、二人の不思議な関係が印象的な初話。ケイトは表情が見えない分余計に彼女に関心が湧いてきて、煤が出る様子、声の抑揚や振舞い、はたまた”鏡”であるエミリコの反応にまで注意が向き、互いの言葉が通じない外国人とやり取りするような新鮮さを感じます。
後半にエミリコがケイトに指摘されて汚れに気付く件が印象的。ケイトもまたエミリコが自分を知るための鏡なのですよね。普段意識しませんが人間は他者という鏡に映し出して自己を確認するわけで、本体と影の主従を逆転させてその事を可視化させたような二人の関係性がとっても面白い。
非常に音響にこだわった作品という印象。環境音や生活音、主人公の息遣いまでしっかり聴かせてくるので臨場感が際立ち、ドビュッシーと供に彼女の静かな生活の中にすっと意識が溶け込んでいくよう。要所で使われるピアノは彼女のまだまっさらな白さと素朴な感情を感じさせます。そして、静かな”何もない”日が終わり、カブのある新しい日の始まりと共に一転して賑やかで明るいバンドサウンドが流れるのも彼女の心の高揚感を感じさせて印象的でした。
主人公は大人しい性格で感情表現は控えめなのだけど、その分ため息などの仕草や小さな表情の変化、疲れ果てて玄関で寝ちゃう等の振る舞いに感情が滲み出ていて見入ってしまいます。何度もカブの姿を眺めてはニンマリする姿はわかるーって感じで好きでした。
そういえばカブって、キックスタートしか無かったり、ヘルメット入れるスペースが無い、座席開けないとガソリン残量が分からない等々、普通の原付と比べるとなかなか不便なんですねえ。セルでかからない時にしか使わないからかキックスタートでエンジンかかると嬉しかった記憶。
誰とでも友達になっちゃうアカリ。旅のマリオネット使い。アカリというフィルターを通すとなんでもなかったものがキラキラと輝き出す。