現代社会を生きる若者として、そして音楽や絵を使って何かを表現するクリエイターとしての登場人物達1人1人を、それぞれの夢や挫折、悩み、そしてお互いの絆に重点を置いて丁寧に描いたとても面白い群像劇だった。キャラクター1人1人の心情描写がとても丁寧で、周りの人間とは違う何かを成し遂げたい、特別な存在になりたいという欲求と、それでもやっぱり周りの目は少なからず気にしてしまい、中々行動に踏み出せない、行動に出ることはできても不安が付き纏う、そういう結構リアルな心情がしっかり描かれてたし、特にまひるとキウイに関してはその辺がより丁寧に描かれてると思った。けどそんな中でもまひる達は花音と出会い、JELEEを結成してクリエイターとしての1歩を踏み出した。表現者としての実力の限界にぶち当たったり、個々の過去の経験やそこから来る不安やトラウマに悩んだり、決して楽しいことばかりが描かれたわけではなかったけど、互いの絆で乗り越え、目指すもののために一生懸命努力するその姿は最高にカッコ良かった。インターネット上のライブ配信や「推し」という言葉とか、現代ならではの世界観作りが徹底されてたから、キャラクター達の考え方に共感できる部分や、作品からのメッセージ性を感じられる部分も多かった。たとえ周りから奇妙な目で見られ、時にはバカにされたとしても、何かを好きになって、それを推すことは決して悪いことじゃないってことを感じられたし、時々耳にする「推しは人生を豊かにする」って文言も間違いじゃないなと思った。メッセージ性もある面白いストーリーは勿論、この作品はそれ以外の部分もかなりレベルが高かった。EDは異なる曲が何曲か用意されていたけど、どの曲も本編の内容とリンクしていてすごく良かった。さらには、配信活動をするJELEEが作中で動画をインターネット上にアップロードしたり、生配信を始めたりしたタイミングに合わせてEDを流すという構成も巧かった。作画や演出も良くて、夜の都会の風景の他、海月ヨルとしてまひるが描いたクラゲの絵が、海に見立てた夜の東京を浮かんでいるかのようなシーンがすごく綺麗だった。アニメ作品としてのクオリティの高さは勿論、ストーリーやキャラクター、その他細かい部分まで、現代社会を生きる現実の視聴者が、共感できたり、何かしらのメッセージを受け取れるように丁寧に作られていて、今の時代だからこそ見て良かったと思えるような素晴らしい作品だった。