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全体
とても良い
映像
とても良い
キャラクター
とても良い
ストーリー
とても良い
音楽
とても良い

 日本のアニメ作品の1つの最高到達点にあたる作品を見た、そう言っても過言じゃないくらいに素晴らしい作品だった。原作を読んで既にストーリーは知っていたけど、今回映像化されたことで作画、演出、音楽、声優さんの演技が加わって魅力がさらに底上げされ、凄まじい作品に仕上がっていた。アニメーターや声優さん達、アニメ制作に関わるプロが集まり、時間と金を惜しみなく使い、全力を尽くして作ったらどれだけすごいものができるのか、それをよく教えてくれる映画だった。
 映画の見所は大きく3つ、序盤のしのぶvs童磨、中盤の善逸vs獪岳、そして後半にしてこの映画のメインである炭治郎・冨岡vs猗窩座の3つ。まずは序盤のしのぶvs童磨、この戦いは、戦闘シーンに迫力があったのは言うまでもなく、特に見所だったのは、しのぶを演じる早見沙織さんと童磨を演じる宮野真守さんの演技だった。この戦いでしのぶが見せたのは、姉の仇である童磨に対する怒りや憎悪、そしてその童磨に自分の最大の強みである毒が通じないこと、体格に恵まれなかったことへの悔しさ等、これまで作中で見せたことがないくらい、今までの笑顔が完全に消える程の強い感情。その激しい感情が早見沙織さんの声でしっかりと表現されていた。特に、腕力や体格に恵まれなかったことを悔やむしのぶの独白には心が痛かった。激しい怒りや憎悪が込もった力強い声で技を繰り出していた直前までのシーンとは対照的な弱々しい声が印象的。そのようなメリハリの付け方も上手いと思った。一方の童磨は、人間らしい感情が欠落している存在。気さくに話しかけたりしのぶの技に感激したり楽しそうにしたりと、一見すると情緒豊かで無邪気に見えるけど、実際の所、言葉の中身は空っぽ、そんな上辺だけ人間の感情をなぞっているような童磨というキャラを宮野真守さんは完璧に演じていた。気味が悪く、悪気なく相手の神経を逆撫でするような話し方には感服した。早見沙織さんと宮野真守さんの演技がこの戦いの面白さをより一層引き立ててくれたし、しのぶが全力をぶつけても童磨には勝てないという事実の非情さも際立った。この童磨戦の決着は第2章に描かれると思うから楽しみ。
 次に善逸vs獪岳、雷の呼吸の継承者同士の戦い。この戦いの戦闘シーンの迫力も凄まじくて、速さが最大の武器である雷の呼吸同士の戦いに相応しくスピード感のある戦いだった。兄弟子が鬼となり、その責任をとって師匠が腹を切った、そのことに対する善逸の怒りや悲しみも表情や声で存分に表現されていた。今まで戦闘面での活躍は寝ている状態が大半だった善逸が、この戦いでは起きている状態で凛々しい表情、そして獪岳に対する怒りから激しい表情を見せ、普段とのギャップがあったしその覚悟の強さを実感させられた。獪岳については、上弦の鬼、しかも十二鬼月最強である黒死牟に遭遇してしまったのは不運としか言いようがないし命が惜しいと思ってしまうのも人間として仕方ないものとして理解はできるけど、それ以外の所業はやはり擁護できる部分は少ない。獪岳1人を特別扱いしてくれる人間は周りにいなかったかもしれないけど、善逸は獪岳を嫌いつつも本心から尊敬していたし、師匠も弟子として獪岳を大切していた、この映画の中では言及はないけど、寺で悲鳴嶼さんや他の子ども達と暮らしていた時も獪岳はきっと家族の1人として大切にされていた。獪岳に敬意を向けてくれたり大切に思っていたりしてくれる存在がちゃんといたのに、それに気づいていなかった、もしくは満足できなかったのは、本人のせいではあるけど少し哀れにも思えた。善逸にとって辛い戦いだっただろうけど、雷の呼吸の継承者としての善逸の覚悟、その善逸が自ら生み出した漆ノ型、獪岳の末路など、見所が多い戦いだった。
 次にこの映画最大の見所である猗窩座戦。まずは戦闘シーンの迫力の凄まじさ。今作の戦闘シーンはどれもすごい迫力だけど、猗窩座戦の迫力はケタ違いだった。個人的に鬼滅の刃の戦闘シーンの中の最高峰だった遊郭編のラストバトルを上回っていると言って良い。特に冨岡vs猗窩座の戦闘シーンが本当に素晴らしかった。実力者同士のぶつかり合いの凄まじさが存分に表現されていて、鳥肌が立つ程の迫力だった。そのようなハイレベルの戦いの中であっても食らいつく炭治郎の姿もカッコ良かった。見ていることしかできなかった無限列車編以降、上弦との戦いや柱稽古を経た成長がよく分かる。透きとおる世界に到達した時の表情や技を繰り出すシーンも印象的だった。凄まじい迫力と緊迫感のある戦闘シーンは今作最大の見所であることは間違いない。けどもう1つの最大の見所、猗窩座の過去編も忘れられない。個人的に作中に出てくる鬼の過去編の中でもトップクラスに完成度が高く、そして重く悲しい過去編だと思っている。その過去編がついに映像化され、演出や音楽、そして猗窩座・狛治を演じる石田彰さんの演技が、過去編の悲しさを最大限に引き出していた。父親のために盗みを働いたことで父親が自殺し、素流道場に拾われて恋雪と出会い、数年を過ごす中で人生をやり直し、幸せになる準備ができていたのに、拾ってくれた師範も守ると誓った恋雪も同時に失ってしまうという悲劇、内容が分かっていても見ていて本当に胸が痛かった。狛治は罪を犯してしまったけど、それは私欲ではなく病気の父親を助けたかったから、実際の狛治はとても優しい人間。病気の看病をさせてしまっていることを詫びる恋雪に対し、「一番辛いのは当人なのになぜ謝るのか」と素で思っている所からも優しさが感じられる。狛治が剣術道場の一派より弱かったから恋雪たちを守れなかったのではなく、むしろ剣術道場の一派より戦闘面では圧倒的に勝っていたからこそ、その一派の卑怯な手段によって大切な人が奪われてしまったこと、猗窩座の独白で描かれた「弱者」の中に、自暴自棄になって剣術道場の一派を虐殺した自分自身が含まれているのも辛い。自分自身に対する怒りも、猗窩座が強さを求める根本にあったというのはすごく辛いけど、その怒りがあって戦いの中でそれを思い出したからこそ、人間としての記憶を取り戻して最後に自分自身を攻撃し、鬼の猗窩座ではなく人間の狛治として死んでいくことができた。その猗窩座の死亡シーンは、狛治の父親、師範、そして恋雪の記憶を取り戻し、3人から「おかえり」という言葉をもらいながら死んでいく、感動的な音楽、父親、師範、恋雪の優しい声と表情、恋雪の「おかえりなさい、あなた」というセリフ、そして石田彰さんの泣きの演技で表現された、今作屈指の名シーンだった。猗窩座・狛治は間違いなくこの映画の主役だったし、その魅力が詰まった映画だったと思う。
 上に挙げた3つ以外にも見所は沢山ある。無限城のCGは初登場した1期最終回から進化を続けて、今回の映画では最終決戦の舞台に相応しい凄まじい迫力になっていた。メインとして描かれた炭治郎、善逸、富岡、しのぶ以外の隊士達の戦闘も描かれ、そのどれも迫力があった。伊黒さんと甘露寺のおばみつカップリング要素も序盤の方で描かれていたのも嬉しかった。無限城の地図を作る産屋敷達とそれを護衛する宇髄さんと煉獄槇寿郎、鬼殺隊全員が一丸となって無惨を打倒するために戦っている、総力戦であることを感じさせる場面が多くて全編を通じて緊迫感があった。
 第2章はおそらく童磨戦がメイン、そして黒死牟戦も始まる。童磨戦ではカナヲの戦闘が本格的に描かれるし、カナヲを演じる上田麗奈様の演技が楽しみ。黒死牟は猗窩座と並んで作中でも特に好きなキャラだから、戦闘シーンに関しても今作の猗窩座戦並の迫力を期待したい。第2,3章も見所いっぱいだから、アニメで見れるのがすごく楽しみ。



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