お粗末な宗教アニメ
手塚治虫とタイトルに入れなかったらおそらく見向きもされていない。
高評価もあるが、それは手塚治虫効果によるところも大きいだろう。
本作品では ブッダの教えとしている内容を、
生きとし生けるもの、それぞれの役割を果たせ(つまり精一杯生きろ)
という風に表現しているが、執着をなくせという根本の教えに矛盾する。
宗教アニメにありがちな ラストシーンでの荘厳な合唱風音楽といい、
その直後に流れるエンドロールでのロックギターを利かせたポップスといい、
演出のチグハグさも観るに堪えない。
「観る順番によって結末が大きく変わる」
そう宣伝していたのはこういう事か…
物語の伏線とその回収を パラレルワールドという設定を利用して
別の作品にする。
別々のストーリーで伏線を仕立てるのだから、知る前と後で 全体のイメージは変わるに違いない。
並行世界で、ただのスピンオフでないところがおもしろい。
しかし、やはりパラレルワールドという設定は かなりムリがあるか。
第1人称で考えても、選択によって並行世界は無限にあることになる。
例えば変わりかけた信号を渡るか、渡らないかで、その信号に差し掛かる者が車を止めたり、通過したり、場合によっては事故になったりもする。
主人公の「君」が事故に遭わない並行世界が、近い並行世界に存在しないはずがない。
そもそも、シフト中の事故で植物人間になるのも強引だと感じるし、
ある特定の場所から動けない 幽霊のような存在になるというのは、もっと強引。
さらにタイムシフトなどというイベントで、主人公が「君」と同じ状態になるというのは、もうSFではなく、ファンタジーの世界だと思う。