好きな人に何を渡したいか、その悩みは相手に何を伝えたいかという悩みへと連結されるもの
凛太郎は何か気の利いた物をパッと渡せるタイプではない。それだけに杏子のアドバイスは良かったね。ケーキ屋に生まれた凛太郎は他の人よりもケーキに永く触れてきた人間だし、薫子は凛太郎の家のケーキを好んで繋がりが生まれた相手
だから、薫子に何か伝えたいならば、その手段にケーキを選ぶのは最も相応しい遣り方に成り得るわけだ
圭一郎の問い掛けはとても的を射たもの。誰かへの贈り物であるならば美味しいのは当然として、そこに何を籠めたいかが課題になる
ここで凛太郎が薫子に伝えたい想いを言葉に出来なかったら問題外だったのだろうけど、彼は不器用でも何を伝えたいかを明確に出来た。それはきっとケーキ作りの腕前以前の課題だったのだろうな
そう思えば、凛太郎が学校でぶっ倒れるくらいの労力となっても弱音を吐かなかったのはその困難に納得できたからだろうね。薫子に伝える感謝を容易に形作れると思っていない
だからか、受け取ったケーキが凛太郎の手作りであると知った瞬間に薫子が描いた表情はその時点で凛太郎の想いの一口目が届いたからかな
あれは誕生日ケーキであって、誕生日ケーキを超える想い。「美味しい…」との台詞には凛太郎から贈られた感謝を味わい、そして作ってくれた事への感謝が籠められているように思えたよ
てか、ちょっと見ただけでも手間隙かけて喜んで貰えるように精魂込めて作ったと判るケーキだったのはちょっと羨ましくなるね
そうしたケーキは味わい以上の想いを持っているから実際に食べたわけでもない相手へも届く
凛太郎の育ちを見守ってきた杏子と圭一郎は誰かの為にケーキを作りたいと願うようになった姿にも、作ったケーキを美味しいと言って貰えた事への喜びに詰まった想いも感じ取れる
それどころか、凛太郎は更なる要望を口にしたね。家業を手伝いたいなんて大抵の親が喜ぶのではなかろうか
でも、杏子と圭一郎が喜んだのはもっと別の事で。「よく笑うようになった」との台詞に籠められた感慨に凛太郎にこれまで与え、そして返された想いの深さを見るかのようでしたよ