第1話の時点で違和感の有った比名子の内面に突っ込むのが人でなしである汐莉な点が少し面白い
幾つかの発言から見えるように汐莉は普通の人間とかなりズレた感覚の持ち主。そんな彼女をして真っ当に比名子の矛盾を突けるというなら、今の比名子は真っ当ではない
けれど、その真っ当ではない彼女の内面に何が有るのかと言えば、本当に悲惨で人間性を保つのが難しい哀しみであったのは強烈でしたよ……
比名子は汐莉を海みたいだと捉えるけれど、実態としては比名子の内面こそ昏い海のように思える
生き残ったのに幸運と思えず、生きてと言われたのに生きたいと思えず。しかし、死にたいと思っても死ねず。そんな彼女が頼ったのが人ではない存在
生きる気力のない比名子にとって海とは絶望の檻、けれど海みたいな汐莉が自分を食べてくれる暴力こそ救いとなる
ただ、厄介なのは汐莉は暴力的に比名子を食べようとするのではなく、希望を与えた上で絶望の死を齎そうとしている点か
比名子が絶望から抜け出すには一度希望を手にした上で死という絶望に辿り着かなければならない。そんなの倒錯であり欺瞞なのだけど、汐莉の人でなし感が逆に血塗られた約束を心置きなく信頼させるものとなるね
けれど、そんな人でなしの道へ進もうとする比名子をして心残りとなりそうな相手が美胡か。これまでの日常描写から見えるように美胡は比名子の人間性を守ってくれた人物。だから人ではない汐莉との関係を秘密にしたい
それだけに美胡が血塗られた世界へと飛び込んでしまうかもと危惧させるラストには心配させられるが…