慊人の発する悪意や害意が夾を追い詰めていく様子にはただただ胸が痛む……
猫憑きという只でさえ、幸福を掴みづらいポジションの夾を徹底的に追い詰めていく慊人の言葉はあまりに辛い…
前回小さな試練を乗り越えた由希は慊人に呼ばれ、不安定になり拳を向けた夾の相手をしなかった。夾が向かい合うべきは由希ではなく、慊人であり、慊人が発する己の罪
夾を追い詰める慊人の言葉は決めつけばかりで悪意に満ちていてまるで聞いていると底なし沼に沈んでいくかのよう
けれど、慊人の言葉は夾の中に元々あった疑念や絶望を引き出すもの
夾が見たくない嫌な部分を、小さな声を引き出すもの
母親の死に関する罪の意識、父親から押し付けられた罪、猫憑きとしての罪
それらは夾から生きる意思を奪ってしまうもの。それでも夾が生きずに居られなかったのは師匠が言うようにありとあらゆる全てが自分を拒絶するわけではないと心の何処かでちゃんと知っているから
透は夾の化け物の姿を見ても必死に向かい合おうとした。
透は夾の化け物の姿を見た後も一緒に居てくれた
呪われた在り様を持つ夾にとって決して手放してはいけない大切な存在
それを理解した瞬間に零れ落ちた夾の真意が……
それは夾がこれまで見てこなかった大切な想いであり、生まれたばかりの小さな想い
でも、夾のその小さな想いは小さすぎて慊人の圧に勝つ事は出来ないし、透にも明かすことが出来ない
「希望なんて無い!」と花を踏みつけた夾の前に訪れた透という存在
大切であると認めることは出来た。けれど、大切だと伝えることは諦めてしまった
透は消えかけている夾の小さな想いを拾い上げることは出来るのだろうか…