『ガルパン』で戦車戦にこだわりを見せた水島努らしい妥協なきレシプロ機の空戦バトルが非常に熱かった。自分はミリタリー方面には疎いので初見では何がすごいのかわかりにくいシーンもあったものの、後々解説を見るとどの機体のマニューバも実際の空戦に基づいたもので、それを踏まえて戦闘シーンを見るとさらに面白く、一粒で二度おいしい作品であった。ただしバトルシーンに文句はないものの、それ以外についてはせいぜい「中堅」に収まる作品、というのが最終的な評価。
まず、作品全体で不自然なまでに「死」という事象が画面から排除されていることが鼻についた。監督の前作『ガルパン』では、最初に「これは戦車道という武道です」という設定を提示することで、少女×戦車という本来ありえない取り合わせを無理なく実現したし、「戦車はスーパー超合金で出来てるから人死には出ません!」という大胆に割り切った設定のおかげで「戦いへの葛藤」をうまく回避できていた。しかしコトブキにはそういった工夫がなく「少女が兵器に乗って人殺しをやっている」という異常な状況が劇中で全く放置されている。
その上劇中で不自然なほど撃墜機や戦死者の描写が乏しく、まるで登場人物全員実際の戦場ではなく、シューティングゲームを楽しんでいるようにしか見えない。「死」と、殺人への葛藤を描くことから逃げているように思える。年長組のザラや「孤児院の維持」という明確な目的を持つレオナはともかく、外見も精神年齢も小学生なチカが敵機を撃墜して「やったー!」と喜んでいる姿にはどこか不気味さを感じてしまう。
最終的に「自由博愛連合vs反イサオ連合軍」という流れになるのも、オウニ商会にいまいちイサオとの因縁がないので盛り上がりが弱い。そりゃイサオはオウニ商会を騙して使ったし、コトブキ飛行隊的にはサブジ―・アレンの仇ではあるが、自由博愛連合がいかにして「独裁」をするのかが見えてこない上、サブジー殺害とアレン撃墜の一件はイサオの「僕がやったよ(要約)」というセリフだけで説明されてしまうため、コトブキ飛行隊と敵対する状況を作るために取ってつけた感は否めない。
つまらなくはない、むしろ面白かったのだが、こうした設定の甘さで完全にノリ切れなかった。『#ガルパン』は未視聴だが、あっちもこういうノリならノーサンキューかな…。
「1シーズンにひとつはある、凡庸な『戦闘美少女』モノ」の域を出るものではない、というのが正直な所。 少女たちが心の内に抱えた問題を、異世界との関わりを通じて解消していくプロットなのだが、優と明日架(シリ明日架・黄昏明日架)以外の掘り下げは浅く、二人以外の各ヒロインには約2話の時間しか与えられないので、いきなり「私は◎◎という問題を抱えていたけど、フラグメントでの出来事を経て変わった!」と言われても、説明があるので納得はできるのだがエモーショナルな揺さぶりは弱い。
スマホゲーで展開する予定で放置されたであろう伏線(キョウちゃんの失踪やフェードアウトしたエロ優など)もけっこうあり、見終えても不完全燃焼感が残るのもバッド。
ビジュアル面でも、桂正和デザインのキャラクターにはキャッチーさが足りない。良くも悪くも、ヒロインたちには(変身後含めて)ゼロ年代深夜アニメ的な垢抜けなさがあり、グッと引きつけるような、下品な言い方をすれば股間に響くような魅力がない。スマホゲー(のメディアミックス)としてこれは問題だと思う。 『艦これ』の島風や『アズレン』のイラストリアス、一航戦姉妹のような、思わず視線を外せなくなるインパクトのあるキャラの不在も早逝の一因だったのではないかと思ってしまう。
作画も質の高低が激しく、時々顔が溶けてたり、爬虫人類になっているようなシーンもあって、いまいち「萌え」という面でも弱い。つまらないと切って捨てるほどではないものの、昨今のスマホゲーを母艦とする人気メディアミックス作品と戦うにはあまりにも力不足と言わざるを得ない、そんな作品だった。