正味20分の間にこれだけ心揺さぶられる物語が描かれていることに驚かされます。ひと夏という瞬く間に過ぎてしまう季節の眩さや刹那さの中で、決して多くは語らないけれど一言一言情感豊かな会話とモノローグと。劇伴等を上手く効かせてメリハリをつけつつ、魅せるところはきちんと見せるなど、文学的な情感を伴って視聴者を引きつけてゆく物語の構成が素晴らしかったです。
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今話は一気にお話が進んで驚かされる展開に。抽象的で付いていくのが大変でしたが、漂流した長良たちは”選ばれなかった”人生の可能性のひとつだったということなのかな。
たとえ実現がどれほど困難にみえようとも、元の世界で自分は唯一無二の存在である、という確かな居場所があったからこその希望(=希のいう光?)だったわけで、そもそもその帰る場所が無かったという。未来は決まっていると言って憚らなかった明星さえ最後には希望の可能性を信じたというのに、突然訪れた元の世界からの卒業(別れ)がなんともやるせなく切ないです。
これで物語の第1章が幕を閉じた感がありますが、次回以降、彼らがどこに再びの光を見つけるのか、物語としてどこに落とし所を求めるのか気になるところです。
あと下ネタ失礼になりますが、卵子を目指した競争に負け受精に到らなかった精子たちはこんな心情なんだろうか、なんてしょうもない事を思いながら観てました。限りなく低い可能性を信じ勝負するもオリジナルとして受肉出来なかった、みたいな。
皆で和気藹々と過ごす休日の楽しげな雰囲気の一方で、淡々と閉館へ向かっているようにみえるおじい。穏やかだがブレない彼の態度は決意がかなり堅い事を伺わせ、くくるの努力の成果の如何に関わらず彼女の希望は遂げられないのだろうという悲しい未来を予感させました。
そして今話の風花は可愛らしい水着姿といい優しさ溢れる振る舞いといいまるで天女さまのよう。物語序盤は沖縄に避難してきた風花がくくるに頼りきりでしたが、馴染むにつれ逆に風花がくくるを支えるお姉さん的存在に変化しつつある?のが面白いところ。母子手帳は…まさかね。
一方、今回空也のがまがまに対する想いが描かれますが、どうもエピソードとしての引力が弱く感じてしまいます。水族館をめぐるお話が佳境へ向かっていく中で存続への想いへ視聴者を感情的に巻き込んでいきたいところではないかと思いますが、淡白な印象が拭えずやや残念な気も。
うどんちゃんの料理に対する情熱が丹念に描かれていて印象に残ります。一方アイス屋でバニラしか頼まないくくるの拘りの無さよ(ここは引き立て役なのね)。田中秀幸さんの優しく深みのある声が神里のエピソードに長い時間を経てきた歴史と想いを感じさせて良かったのです。
本作品、お話やキャラクタの描写は相変わらず淡白な印象で、強く興味が惹かれたりは今のところありませんが、何かと閉塞しがちな現実の中で、そのおおらかさで全てを包み込んでくれるような安らぎと解放感のひとときを求めて、毎週の穏やかな楽しみになりつつある気がします。
すみれ回。挫折続きで傷付いている彼女は主役という夢を求め続けているのはもちろんですが、もっとシンプルに誰かに認められたい必要とされたいと切望していたのかもしれません。かのんのスカウトはそんな気持ちに応えてくれ、燻っていたプライドを夢へ挑戦するポジティブな闘志に向かわせてくれたように思います。そして、すみれと可可は Liella! の漫才担当になりそうね。あとギャラクシー!ってマクロスのヤックデカルチャー!みたいだと思いました笑
また本作のクラシックな劇伴の使われ方や天候の変化などによる心理描写は作品にリズムやライブ感、生き生きしたドラマを演出していて、ミュージカルやディズニー映画のような臨場感が感じられて好きです。